税金で腰かけ仕事に… 神戸市の“内定取り消し学生”救済雇用は美談にあらず

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 理念は麗しくとも、内実の伴わない施策はあるもの。

 新型コロナウイルスの被害から市民を守ろうと、神戸市が打ち出したアイデアもそのひとつだ。

〈内定取り消し100人雇用〉

 コロナ騒動で企業から内定を取り消された市内在住の学生らを対象に、市役所で1年間の任期付き職員を募集するというもの。すでに募集は3月25日から始まっている。

 市役所の担当者に聞いた。

「あくまでも内定を取り消されて、4月から働けなくなった方を救うという趣旨です。こうした募集に前例はありませんが、厳しい就職状況の中、何かしら支援できる方法としてご紹介させていただきました」

 業務内容は、

「基本的には各区役所での窓口業務や一般事務などです。われわれ市の職員と同等の仕事ができるような配属を予定しています」

 フルタイムの場合は週5日、約39時間の勤務で基本給は約22万円。短時間勤務の場合は週4日、31時間で約17万5千円。基本的には勤務しながら、来年4月の就職を目指して活動していくことになる。とはいえ、就活では企業側の都合で面接や試験の日時が指定されることが多い。就職リベンジを期した“新職員”たちは、自由に勤務時間を調整できるのか。

「自由というわけではないのですが、休暇制度を設け、有給が年に10日、夏季休暇もあるのでそちらをご活用いただく形になります」

 柔軟に対応したいと担当者は言うが、背水の陣で就活に臨むにあたって、振り替えられる有給が10日ぽっちでは少なすぎよう。

 しかも、

「1年経過後、改めて雇用することは想定していませんので、(就活を)頑張ってください、と申し上げるしかありません」

 つまり、いかに職務に精励しても、1年経ったら雇い止め。これではみなテキトーな腰かけ仕事になっても市として文句は言えまい。その人件費は税金なのだから笑うほかないが、募集を始めた25日から27日までの応募が0人なのはせめてもの幸いか。

週刊新潮 2020年4月9日号掲載

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