コロナ経済危機、切り札は「消費税凍結」 東日本大震災よりGDP減少!

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10%消費税で始まった「アベショック」

 安倍政権は、昨年10月に消費税を10%に上げた。これによって日本は、昨年12月までの直近四半期、実質成長率マイナス6・3%という、東日本大震災時の冷え込みを上回る激しい経済停滞に見舞われた。念のため申し上げるが、これはコロナ・ショックが勃発する前の数字である。長年消費増税をすべしとあおり続けた国内大手新聞はこの安倍政権の増税を全く批判しなかったが、「忖度」のない海外メディアは激しい批判を展開した。例えば、本年2月19日に英紙フィナンシャル・タイムズは安倍政権の増税判断を批判する社説を掲載し、同月18日に米紙ウォールストリート・ジャーナルは消費増税が「大失敗」だったと酷評した。

 そして現在、今年になって始まった新型コロナウイルス騒動と相まって、繁華街、歓楽街、観光地といったあらゆる場所から人々の姿は消え去り、大多数のビジネスが途轍もない「減収」の嵐に直撃される事態となった。ほとんど全ての国民所得が下落すると共に、倒産・失業が拡大し続けている。これはもはや、「国難」と呼ぶべき状況である。

 こうした安倍政権の不適切なコロナ対応と消費増税によって誘発された経済危機、いわばアベショックに対処するために現在求められているのは、徹底的なコロナに対する医療態勢の確立と、徹底的な経済対策だ。

 そしてそのために今、何よりも効果的な方法は、10%に引き上げられた消費税率を5%引き下げる「消費減税」、あるいは10%引き下げる「消費税凍結」だ。そもそも、消費増税こそがあらゆる消費を冷え込ませた元凶だからだ。

 しかし我が国には「今の日本は、1千兆円以上の借金があって大変だ。だから、消費税を増税して税収を増やし、財政を再建することが必要なのだ!」という思い込みが濃密にあり、これが消費減税・凍結の実現を阻んでいる。

 しかし筆者は、安倍内閣の官房参与を務めていた時から、というよりもむしろ参与になってもらいたいと安倍自民党総裁から打診される遥か前から、そうした認識は単なる「勘違い」「間違い」に過ぎず、経済停滞期の消費「増税」は確実に経済をさらに冷え込ませ、税収を下落させ、かえって財政を「悪化」させると主張し続けてきた。

 この筆者の主張は、過去の計量経済分析のデータに基づく客観的な裏付けのあるものだった。無論、消費増税を主張する政治家や学者、エコノミストたちは筆者に反対したが、彼らが持っていたのは客観的な裏付けではなく、「増税すれば税収が上がる」という素朴な思い込みだけだった。

 その後、筆者の主張は政府によって退けられ、結局昨年10月に増税が断行されたのだが――結果は筆者が予想した通りとなった。つまり日本経済は完全にボロボロの状態になったのだ。

 客観的裏付けある主張の正しさと、思い込みはやはり思い込みに過ぎなかったことが改めて示される結果となったわけだが、まず第一に、10月から12月の四半期の「小売り」はマイナス3・8%(対前年同月比)、「卸売り」に至ってはマイナス8・1%となった。これは、過去2回の増税時の落ち込みの2倍から5倍という未曾有の冷え込みだ。GDPについては「実質」成長率がマイナス7・1%(年率換算・前期比)、「名目」成長率がマイナス5・8%となった。この後者の名目成長率は、過去2回の増税時には、横ばい、ないしは微増であったのだから、今回の冷え込みは尋常ならざるものだったのである。ちなみに前回2014年の消費増税は、アベノミクスによるデフレ脱却の勢いを打ち砕き、前々回の1997年消費増税は日本経済を「デフレ化」させ「失われた20年」を作り上げる激しい経済破壊をもたらしたのだが、今回の増税はそんな破壊的な2回の増税を遥かにしのぐディープ・インパクトをもたらしたのだ。

 これはもはや「経済クラッシュ」の状態だ。

 安倍内閣は、総理も官房長官も財務大臣も皆、消費増税による経済の冷え込み問題に対して「万全を期す」というセリフを繰り返してきたが、彼らは今、「景気は緩やかに回復している」「景気は底堅い」などと強気の発言を繰り返しているものの、陰では顔面蒼白になっているに違いない。

 しかしそれは筆者にとっては、十分に予想した範囲だった。そもそも14年増税時は輸出が「拡大」していく局面だったため、増税ショックが輸出増加によって幾分緩和された一方で、今回の増税は「輸出が減っていく」タイミングであったからだ。つまり、「輸出減」と「増税による消費減」というダブルパンチが日本経済を襲ったのだ。

 しかも、今回の増税で「10%」という、誰もが消費税を簡単に計算できてしまう税率になったことも災いした。消費者心理学的に言えば、こうした「税の分かりやすさ」が消費を著しく減退させてしまうことは明白だ。実際筆者は、京都大学の心理実験から、14年の8%増税よりも19年の10%増税の方が、消費減少量が1・41倍に拡大するだろうことを定量的に予測していたが、そうした学術的予測通りの帰結を今、目の当たりにしているわけだ。

 しかも、20年の日本経済は、増税によって途轍もなく冷え込んだ状況の上にコロナショックが襲いかかり、インバウンドの縮小と「自粛」の嵐によるさらなる内需低迷に苛まれ、「令和恐慌」とでも呼ぶべき恐ろしい事態を迎えるに至った。

 ただし、増税によってどれだけ景気が悪化しようとも、税収が増えるならまだマシな話と言えるのだが、あろうことか――今回の増税は、「税収」そのものを「下落」させる、という愚か極まりない結末を導くのが実態なのである。

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