「コロナ禍」で高まる日本版CDCを望む声 まずは危機管理の人材育成から始めよ

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ロールプレイ

 第四に、疑似体験です。ケース・スタディやロールプレイを重ねて、実戦的なセンスを磨くのです。たとえば、私は先の女子大での授業で、学生にこんな質問を投げかけます。

 顧客情報の入ったパソコンを、電車の網棚に置き忘れてしまったことに駅のホームに降りてから気が付いた。さて、今からどうするべきか?

 次の中から正しいと思われる行動を選んでください。

(1)会社に遅刻してしまうので、取り急ぎ最寄りの交番に駆け込んで遺失物届を提出する
(2)会社に置き忘れの事実を連絡して、駅員と一緒にパソコンの回収に専念する
(3)直後なので、すぐ後の電車に乗って、終着駅まで置き忘れた電車を追いかける
(4)家族に連絡をして、置き忘れたパソコンの回収を依頼する

 電車の運行間隔や混み具合は『都市部』を想定し、以下のように解説しています。

(1)警察が即座に探してくれる可能性は低く、遺失物として届くのを待つことになる。
(2)駅員が進行先の駅に連絡を取り、該当車両を点検してもらえば見つかる可能性が高い。
(3)終着駅までパソコンに追いつけず、その間に持ち去られるリスクが高くなる。
(情報の少ない家族では、駅員に詳しい情報を伝えられず、捜索の効率が落ちてしまう。
(4)情報の少ない家族では、駅員に詳しい情報を伝えられず、捜索の効率が落ちてしまう。

 従って、正解は(2)です。

 このようにして、正しい理由と間違っている理由を、丁寧に解説していくのです。

 極めて実践的であるため、アカデミックとは言いがたいとは思います。しかし、大学で危機管理に目覚めた学生が、実社会でさまざまな経験を積んでいけば、危機管理ができる人材を早く育てることができるでしょう。次の大震災も、次のパンデミックも、確実に迫っているのですから。

田中優介(たなか・ゆうすけ)
1987年、東京生まれ。明治大学法学部卒業後、セイコーウオッチ株式会社を経て、2014年、株式会社リスク・ヘッジ入社。企業の危機管理コンサルティングに従事、現在は同社代表取締役社長。岐阜女子大学特任准教授も務める。著書に『スキャンダル除染請負人』(プレジデント社)、『地雷を踏むな』(新潮新書)。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年3月27日掲載

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