「コロナ禍」で高まる日本版CDCを望む声 まずは危機管理の人材育成から始めよ

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リスク・コミュニケーション術

 第二に、基礎的な危機管理の手順です。たとえば、感染症の対策本部を設置したら、次の4項目の役割分担を決める。

(1)対策にあたる組織の構築(役割の分担と外部専門家の選定など)
(2)情報収集の体制作り(感染に関する中国の情報と国内の情報を入手するルートなど)
(3)シミュレーション(楽観的な予測・標準的な予測・悲観的な予測の3つを行う)
(4)受け皿(患者の隔離場所や検査体制・医療体制などのリサーチと、埋めておくべき外堀、関係する法律の確認などの考察)

 これを知らないと、危機を前に“頭が真っ白”となって、何から手を付けたら良いか分からなくなってしまうのです。記者会見やニュースリリースなどの情報開示も同じです。いま多くの企業は、感染者が出た際の情報開示に戸惑っていますが、決して難しいことではありません。「感染の拡大防止」に繋がるか否かという視点で、開示の必要性を判断すれば良いのです。

 第三に、リスク・コミュニケーション術です。政治家や官僚は今、国民からの信用を失っています。PCR検査が増えない理由や、マスクの供給予測すら分かりやすく説明できていないからです。原因は、総論から始めて各論に至ることや、戦略の後に戦術を語るという基本を忘れているからでしょう。総理が発表する各種の要請も然りです。これは現政権だけにとどまりません。原発事故が発生した、元民主党政権の時代も同じです。当時の官房長官はいきなり「水道水の摂取制限をします」と発表しました。こんな各論から発表したために、市中から飲料水が消えたのは、苦い記憶として残っています。

 苦い記憶といえば、今年の春の選抜高校野球が中止となったことも苦い記憶となって残るはずです。中止の是非は論じません。しかし、総論としての「ポリシーや基準」が示されないと、各論としての「中止の判断」は、横並びや萎縮の方向に傾いてしまう。それだけは言えるでしょう。

 コミュニケーションの分野の専門家は決して少なくありません。広告代理店やPR会社のOBなら分かりやすく教えてくれるはずです。議論において論点をすり替える「ご飯論法」(「朝ごはんを食べた?」と聞かれた際に、パンを食べたのに「ご飯(お米)は食べてない」と答える手法)と呼ばれる答弁が、命にかかわる危機においては全く逆効果であることも。

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