新型コロナ対策で全国民に「現金10万円」? 専門家が指摘する“他にやるべき事”

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30兆円は医療機関へ

 30兆円という規模をどう見るか。

「それなりのインパクトはあるものの、マインドが積極的に消費に向かうとは考えにくい。アメリカは2兆ドルの経済対策を検討していると発表しました。それでも株価は上がりませんでした。これは、2兆ドルバラまいても、効果は期待できないということを意味します」(同)

 そもそも、マインドが収縮した原因はなにか。

「リーマンショックは、一時的な金融的ショックでしたから、金融面のテコ入れで回復しました。アメリカや中国が財政出動し、徐々に回復していったのです。ところが新型コロナは、今のところいつ収束するのか先が見えません。普通の感染症ではないので、専門家も人によって意見がまちまちで、対応に右往左往している状況です。これで、不安が煽られるわけです」(同)

 アメリカは、新型コロナ感染拡大は長期戦になると覚悟している。一方、日本は?

「いまだに予定通りのオリンピック開催を主張するなど、長期戦になるとは見ていません。3月20日に茂木敏充外相が中国と韓国の外相とテレビ会談を行いました。この時茂木外相は、オリンピックを完全な形で実施すると言っています。何を根拠に、完全にできると言い切れるのでしょうか。安倍首相も、オリンピック開催について、3月17日のG7首脳緊急テレビ会談後、『人類が新型コロナに打ち勝つ証しとして、完全な形で実現することにG7の支持を得た』と発言しています。どうやって新型コロナに打ち勝つのか、見通しが甘いと言わざるを得ませんね」(同)

 もっとも22日、国際オリンピック委員会(IOC)が東京オリンピックの延期を検討することを明かした。これで安倍首相も延期を容認せざるを得なくなったが、中止という選択肢はないと強調。オリンピックの実現にこだわる理由は何か。

「ひょっとすると安倍首相は、オリンピックを開催することで、景気回復を見込んでいるのではないでしょうか。そのために検査数を抑えて、なだらかな感染拡大を狙っていく。これで収束しているように見せかけようとしているのかもしれません」(同)

 台湾は新型コロナの封じ込めに成功したとされる。

「台湾の場合は、ITの専門家がこの問題の担当者として、例えば学校では、感染者が1人でると学級閉鎖、2人以上なら休校というように、明確なルールを決めていました。ところが安倍首相は、一斉休校を要請しました。そして、4月の新学期から授業再開して、休校は延期しないと。どんな根拠で延期をしないのか、その理由を示していません。それが不信感を募らせ、消費マインドを委縮させるのです」(同)

 消費マインドを上向かせる、効果的な手法はあるのか。

「マインドを上向かせるには、国民に30兆円バラまくよりも、まずは新型コロナがいつ収束するか、その目途をつけさせることです。国内の感染者は実際に何人いるのか、そのデータを得るために、徹底的に検査を行うのです。ドライブスルー方式の検査も行ったほうがいい。3月6日から、PCR検査が保険適用となりました。ところが、その後10日間で保険で検査を受けた人はわずか329人です。検査はまだまだ行われていないという状況です。十分に検査が行える体制を築き、感染者が出た場合は、それを受け入れる医療機関を整備する。そのために大規模な資金を注ぎ込むのです。30兆円は現金で国民に配るのではなく、まずは治療のための医療へ出すべきですよ。新型コロナ感染に関する、工程表の作成も必要となってきます。国内の感染データが明確になれば、右往左往していた専門家も先行きが見えてくるでしょう。収束の時期がわかれば、国民の不安は一気に払拭されます」(同)

週刊新潮WEB取材班

2020年3月24日掲載

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