新型コロナで中止…“幻のセンバツ”で見たかったプロ注目の「ドラフト候補」たち

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 新型コロナウイルスの感染拡大で、史上初の中止が決定された第92回選抜高校野球。出場予定だった32校の選手たちにとって、非常に残酷な結果になってしまったが、このなかには、今秋のドラフト会議で注目を集めそうな選手が数多く存在している。夏には再び甲子園での雄姿を見せてくることを期待して、“幻のセンバツ”に出場する予定だったドラフト候補を取り上げたい。

 まず、投手は中森俊介(明石商)、小林樹斗(智弁和歌山)、高橋宏斗(中京大中京)の本格派右腕が筆頭候補となる。中森は入学直後から公式戦のマウンドを任されており、過去3回出場した甲子園でも8試合に登板して5勝をマークするなど“世代ナンバーワン”との呼び声が高い。昨年夏の甲子園では最速151キロを記録しているが、決してスピードだけではなく変化球やコントロールのレベルも評価されている。夏以降は肘の状態が本調子ではなく、秋の近畿大会では大阪桐蔭に競り負けたとはいえ、万全の状態であれば攻略するのは簡単ではないだろう。

 小林は、昨年春夏連続で甲子園に出場している。選抜ではリリーフで中森と投げ合い負け投手にはなったが、この試合では中森を上回る最速147キロをマークして、6回1失点と好投した。エースナンバーを背負うことになった秋には調子が上がらず、近畿大会では2試合で4回の登板に終わったが、フォームに悪いクセがなく潜在能力の高さは申し分ない。

 中森と小林が調子を落としている間に一気に評価を上げたのが高橋だ。下級生の頃はスピードこそあるものの、不安定な制球が目立った。だが、新チームとなった秋からは安定感が一気に向上。明治神宮大会では3試合、15回を投げて16奪三振、3四死球、3失点の見事な投球でチームを優勝に導いた。コンスタントに145キロを超えるストレートと打者の手元で鋭く変化するスライダー、フォークはいずれも高校生離れしたものがある。

 この三人以外では、右腕なら片山楽生(白樺学園)、寺西成騎(星稜)、嘉手苅浩太(日本航空石川)、岩崎峻典(履正社)、申原理来(大阪桐蔭)、川瀬堅斗(大分商)、八方悠介、前野将輝(ともに鹿児島城西)、左腕なら下慎之介(健大高崎)、松島元希(中京大中京)、藤江星河(大阪桐蔭)、若杉晟汰(明豊)などの名前が挙がる。

 このなかで注目したいのが川瀬と八方の九州勢二人だ。川瀬は1年夏からマウンドを経験し、その後故障で苦しんだ時期はあったが、新チームではエースとして活躍している。高校の先輩である森下暢仁(広島)を彷彿とさせる上から投げ下ろすフォームで、140キロ台中盤の角度のあるストレートが魅力だ。一方、八方は最速146キロを誇る九州では指折りの本格派。秋の九州大会の準決勝では川瀬に投げ負けたものの、1回戦の佐賀学園戦では6回までノーヒットという快投を見せている。久保康友(元DeNAなど)に雰囲気の似たスリークォーターで、制球力も申し分ない。

 野手も様々なタイプの好素材が揃っている印象だ。スラッガータイプでは小深田大地(履正社・三塁手)、西川僚祐(東海大相模・外野手)、井上朋也(花咲徳栄・外野手)、入江大樹(仙台育英・遊撃手)、西野力矢(大阪桐蔭・三塁手)、仲三河優太(大阪桐蔭・外野手)などが候補。

 この中でも実績と安定感でナンバーワンと言えるのは小深田になるだろう。昨年春、夏の甲子園に3番、サードとして全試合フル出場。ホームランこそなかったが、3割を超える打率を残してチームの全国制覇に大きく貢献した。安定した下半身を生かした鋭いスイングが持ち味で、長打力と確実性を兼ね備えている。堅実なサードの守備も持ち味だ。

 その一方で、とらえた時の飛距離では西川がナンバーワンといえる。1年夏から4番を任されていきなり場外アーチを放つなど、高校生離れしたパワーを持っている。ただ、タイミングをとる無駄な動きが大きく、高いレベルの投手相手になると苦しいのが現状で、昨年夏の甲子園でも2試合でノーヒットに終わった。どこまで確実性をアップできるかが、今後のポイントになりそうだ。

 井上は、関東では西川と双璧となる右の強打者。引っ張るだけではなく、右方向へも長打を放てるのが魅力だ。入江は、昨年秋の明治神宮大会で特大の一発を放ってスカウト陣にアピールした。打てる大型ショートで、軽快な守備も魅力だ。西野と仲三河は大阪桐蔭強力打線の中心打者。西野は近畿大会で中森から同点スリーランを放ち、仲三河も大阪府大会の決勝で特大の一発を放っている。

 スラッガータイプ以上に注目を集めそうなのが、リードオフマンタイプの来田涼斗(明石商・外野手)、細川凌平(智弁和歌山・外野手兼遊撃手)。来田は昨年の選抜、智弁和歌山戦で先頭打者ホームランとサヨナラホームランを放つ“離れ業”をやってのけた。均整のとれたたくましい体格で長打力とスピードを兼ね備え、「高校ナンバーワン外野手」との声も聞かれる。

 細川は小柄ながら高いレベルで三拍子揃ったトップバッター。昨年夏の甲子園、明徳義塾戦では起死回生の一発を放ち、パンチ力も申し分ない。春からは中学時代に守っていたショートに戻るとも言われているが、内野の守備でどんなプレーを見せてくれるかにも注目だ。

 他にも、捕手では強肩強打を備えた内山壮真(星稜)、関本勇輔(履正社)がいるほか、優勝候補の筆頭に挙げられる中京大中京の印出太一(捕手)、中山礼都(遊撃手)、西村友哉(中堅手)は攻守のバランスの良さが光る。選抜での活躍次第ではドラフト指名圏内に入ってくる可能性は十分にあるだろう。

 このように紹介してきたように、今年のセンバツに出場予定だったプロ注目の選手たち。夏の甲子園で、彼らの姿をぜひ見たいという野球ファンの期待に応えられるよう、それぞれのドラフト候補の選手たちには、気持ちを切り替えて頑張ってほしい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年3月15日掲載

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