【新型コロナ】R-1ぐらんぷりでわかった芸人が“無観客”で演じる難しさ

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「無観客ならお断り」の芸人は多かった?

 新型コロナウイルスが猛威を振るい、テレビの収録現場からは、あっという間に“観客”が消えた。

 バラエティ番組はエキストラの観客をスタジオに集め、お笑い芸人はその反応を見ながら収録を進行していた。だが、それが禁止されてしまったのだ。

 ちなみにデイリー新潮は2月27日、「新型コロナでバラエティ番組は無観客に…… 観客を用意する“仕出し屋”は大ピンチ!」の記事を掲載している。

 R-1でも冒頭、審査員の勝俣州和(54)が無観客での生中継だと説明し、「みんなで盛り上げていきましょう」と呼びかけた。気持ちは分かるが、やはり“焼け石に水”だったようだ。

「私は最初から最後まで見ていましたが、ネタ見せに立ち会ったプロデューサーのような気持ちになり、全く楽しめませんでした。芸人は観客の反応を見ながら“間”を取ります。喋りのテンポなどを細かく調整しながら、場の雰囲気を作り上げていくわけです。それが完全に封じられた。結局、独りぼっちの男や女が、カメラの前で絶叫しているようにしか見えないのです。視聴していて、なかなか辛いものがありました」(同・男性スタッフ)

 大相撲の無観客試合が盛り上がらないのと同じ理屈だという。

「大相撲の視聴率も振るわないと聞いています。無観客のため、画面が寒くなっているのが分かるんですね。違和感を覚えた方も多いのではないでしょうか。改めて、エキストラ会社にお金を払ってでも、スタジオに観客の皆さんを呼ぶメリットを再認識しました。何よりも出演した芸人さんがかわいそうなR-1だったと思います」

 次に“専門家”に取材を依頼した。演芸評論家の吉川潮氏に「芸人にとっての無観客」を聞いた。

「6代目の三遊亭圓生(1900~1979)は、自身の落語を音源に残しました。今も『圓生百席』のタイトルで販売されています。これは全て観客のいないスタジオ録音でした。圓生は折り目正しい芸でしたし、特に泣かせる人情噺なら違和感なく聞けます。圓生のように話芸を得意にする落語家なら、スタジオ録音でも大丈夫でしょう。しかし、爆笑志向の落語家には、無観客の録音は昔から不評でした。『スタジオ録音ならお断りします』と断言する落語家さんは何人もいたものです」

 やはりスタッフが寄席や劇場に足を運び、お金を払って聞きに来た、本物の観客を前にして演じられた落語や漫才を収録する。こうして撮られた動画や音声が王道だという。

「近年、テレビで放映される落語や、売られている落語のCDは、大半が寄席や劇場で収録されたものでしょう。スタジオ録音は下火のはずです。一方のエキストラ観客ですが、昔、立川談志さん(1936~2011)から面白い話を聞いたことがあります。テレビ収録の途中で、観客がエキストラだと気づきました。談志さんはスタッフに『何で俺の落語を聞いて観客が金をもらうんだ』と抗議したそうです(笑)。愉快なだけでなく、お笑いの本質に触れたエピソードだと思います」(同・吉川氏)

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