「世界一受けたい授業」で話題「わかり合えない人とどう付き合う?」 カラテカ矢部とブレイディみかこが語る

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先生って

矢部 あはは。そういう経緯があったので、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の連載が新潮社の「波」で始まった時点から、読むようになりました。ブレイディさんがイギリスに渡って23年。アイルランド人の男性と結婚され、今回の著書の主人公である息子さんが13年前に生まれた。現在の肩書は保育士・ライター・コラムニストですね。

ブレイディ はい。

矢部 連載の1回目から、中学校の学校見学会で「UptownFunk(アップタウン・ファンク)」が流れてくる様子とか、音楽室に続く廊下の壁にブリティッシュロックのアルバムがずらっと並んでいる光景とかが描かれていて、しかも一枚一枚アーティストの名前を挙げられている。僕は学生時代に先生の話を聞いていても、この人のことはこれからもずっと分からないままだろうなと思っちゃったりしていた時期があったんですけど、この先生の話ならずっと聞いていたいなっていうか……あ、ブレイディさんのことを勝手に先生って言っちゃいました(笑)。

ブレイディ 先生?

矢部 こういう学校の雰囲気が好きな人っていうのは、子どものころにたぶん僕と同じような経験をしている人で、そういう人なら僕のことも分かってくれるんじゃないかなあ、と。本の中に知らなかった言葉や新しい考え方がどんどん出てきて、それを息子さんの目を通して知っていけるのも良くて。1章を読み終えたらいったん本を閉じたり、読み返したりしながら自分なりに考えています。

ブレイディ ありがとうございます。本の中に、「エンパシー」っていう言葉が出てくるじゃないですか。自分が意見に賛成できない人や、かわいそうって思えない人であっても、その人の立場に立って考えてみる能力のことなんですけど、矢部さんの本にはそれが全編にあると思うんです。

矢部 いま、初めて気がつきました。

ブレイディ 大家さんと矢部さんは年齢も環境も違うし、別々の世界で生きてきた人でしょう。でも、大家さんと出会ったことによって、矢部さんは自分のおばあちゃんのことを考えるようになって……これはエンパシーそのものですよ。『大家さんと僕』はエンパシー漫画、エンパシーの教科書じゃないかと思うんです。だからわたしたちの本はつながっている(笑)。

矢部 エンパシー漫画という言葉、なんだか腑に落ちます。1冊目を出したときに「新しい家族の形を描いた」とも言っていただいたんですけど、僕自身はあんまりそう思って描いてはいなかったんですよ。僕には、同じ家に住んでいる大家さんのことをとにかく知りたいっていう思いしかなくて。自分と違う価値観をもっていることが面白いと思ったんです。最初は交流を続けられるか不安だったんですけど、いろいろ話して興味を持っていくと、そういう感情はなくなっていって。

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