【新型コロナ】クルーズ船乗客からの“訴訟”はあるか 日本の不作為追及?

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 ダイヤモンド・プリンセスのアメリカ人乗客約330名が米政府チャーター機で帰国した。しかし……。

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「安全で清潔な場所で隔離して。トランプ助けて! 政府の飛行機に乗せて!」

 日本のニュースで流れたアメリカ人女性の懇願を思い起こせば、船内が不潔か清潔かはともかく、彼女が不快に感じたのは事実。となれば、タバコは言うに及ばず、自分が太ったのはファストフード業界のせいと訴える、などという文化が根付いた国ゆえ、いつなんどき、船内の環境や日本側の対応をめぐる訴訟が起こされても不思議はないのだ。

「現場に居ないので政府の対応は評価できないが」

 と前置きし、危機管理コンサルタントの田中辰巳氏が語る。

「海外、とりわけアメリカの弁護士は内心ほくそ笑んでいるでしょう。2006年、北米トヨタが約217億円の損害賠償を求められた訴訟が想起されますから。社長からセクハラを受けたと女性秘書が訴えて、結局は和解しましたが、追及されたのは会社の不作為でした」

 米国の裁判所で争われたこの件と同じように、

「死者を出したクルーズ船内の隔離について、日本政府の不作為や隔離の法的根拠が厳しく調べられる恐れはある。狡猾な弁護士の目には、クルーズ船が“全身にダイヤモンドをまとった魅力的なプリンセス”と映っているかもしれません」

 他の日本企業でも、1999年、東芝がフロッピー関連で約1100億円。12年にはホンダが広告をめぐって約140億円を支払わされている。いずれもアメリカの裁判所が舞台の集団訴訟で、企業側のイメージ悪化を防ぐための和解。この超高額訴訟とは異なるが、実際、国相手の訴訟が起こされるリスクはあるのか。

 アメリカの法曹資格を持ち、日本国内で活動する外国法事務弁護士に訊くと、

「国際法上、国を相手取った訴訟はかなりハードルが高いです。主権国家が他国の裁判権に従うことを免除される『主権免除の原則』が適用されますから。私は、ウイルスを抑え込めなかった日本のイメージ悪化のほうが深刻と感じています」

 ただし、と続ける。

「アメリカには原告側の弁護を専門に成功報酬を得るアグレッシブな弁護士がいます。彼らは和解金の2割から3割の報酬を目当てに、法律的に無理があっても提訴することもある。だから、絶対に訴訟が起こされないとは言い切れません」

 万一、訴状が飛んできたら、我が国は主権免除を盾に突っぱねられるだろうか。

週刊新潮 2020年3月5日号掲載

特集「『感染者百万人』という脅威」より

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