テレビ朝日「10万円でできるかな」やらせ問題 “くじ”に“きのこ”、ADが明かす手口

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「やらせ栽培」も浮上

 サンドウィッチマンをはじめ出演者には、こうしたからくりは知らされていなかったといい、実際にスタッフ同士のやり取りの記録には、概略、以下のような生々しい会話が残っている。

〈もうちょっと当選券がほしい、とチーフから言われました〉

〈追加であと数万円買えないかな。(当たりの)法則が見つからないんだ〉

〈5等当たりの法則は150枚買って見つけました〉

 こうした仕込み作業には本来の資金10万円の数倍の額が注ぎ込まれたというから、番組の実態は「数10万円でできるかな」だったわけだ。

 さて、問題の放映回のくじはキスマイチームが「ワンピース」とコラボの「白ひげスクラッチ」を250枚購入。番組では6等200円をはじめ、3等5万円も1枚当選という成果が映し出されている。もっともこの5万円は、削る前から映されていて「仕込み」ではない。こうした“誤算”もあって当選金は6万8千円。対してゲストチームは「わんにゃんスクラッチ トリプルアタック」を4万円分200枚購入し、当選金の合計は1万7千円という結果であった。

 両スクラッチとも還元率は45%。5万円分購入で2万2500円、4万円分だと1万8千円の当選が期待できるわけで、つまりは余計な細工をせず真っ当に購入しても大差なかったわけだ。が、

「確率的にはトントンでも、実際に収録の日に当たりがなかったら番組は成り立ちません。そのための保険という意味でも、事前の仕込みは必要だったのです」(同)

 とはいえ「金券」を仕込むなど、いささか度が過ぎるのではないか。

 当のテレビ朝日に質すと、

「『スクラッチくじ』企画については、削るマークが9つ前後なので当たりに一定の法則があるのではと番組スタッフが推論し、そのシミュレーションとして10万円以上のくじを購入したこともありましたが、既にスクラッチを削ったくじを番組収録に使用することはできません」(広報部)

 と、やらせを否定するのだが、そもそも企画の趣旨は「宝くじ必勝法」ではない。“法則を見つけるシミュレーションのために買った”とは実に苦しく、前出のADは付言して、

「深夜枠の時代に10万円で土地を借り、キノコを栽培する企画がありました。ところが全然育たず、仕方なくチーフの指示でスタッフがスーパーまでシメジを買いに行き、接着剤で地面に張り付けて栽培したかに装った演出がありました」

 と明かし、これには局も、

「天候不順で農作物が例年通りに発育していない等したため、通常の収穫期のイメージを放送しようと、他から購入したものを撮影に用いていたことがわかりました」(前出・広報部)

 そう認めるのだ。上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)が言う。

「当たりを仕込んでおくという発想自体が安直です。ハズレばかりでぼやきながらスクラッチを削る姿も、演出次第では十分面白くできる。それがテレビマンの腕の見せ所でしょう。キノコを仕込むといった罪のないやらせとは異なり、『金券』である宝くじを使って芸能人が当選する姿を映し出し、視聴者の射幸心をみだりに煽るのは、罪のないやらせとは思えません」

 ツチノコやネッシーで止めておけばいいのである。

週刊新潮 2020年2月20日号掲載

特集「この『やらせ』は笑えない! 『サンドウィッチマン』も知らない『テレ朝』人気番組の『宝くじ裏台本』」より

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