台湾総統選「蔡英文」再選のウラ 中国共産党のあからさまな支援に台湾住民が反発

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裏目に出た「中国の肩入れ」

 だが皮肉にも、国民党の足を引っ張ったのもまた、他ならぬ中国だったのだ。
 国民党の元公職経験者によると、一度は韓を候補に決めた国民党本部も、支持率が失速するのをみて、「韓国瑜で本当に良いのか? タマが弱いのでは」と疑念を抱き、中国に問い合わせを行ったという。ところが中国は「そのままでよい」と回答したそうだ。
 台湾在住の元外交官によると、中国政府の“お抱え”と言われる台湾のテレビ局は、『中国電視』と『中天電視』の2局。これらのメディアは『旺旺中時』グループと呼ばれるが、実は、予備選で韓国瑜のライバルだった鴻海の郭台銘会長は、同グループの経営者とはビジネス上の対抗関係にあるのだ。それを知っていた中国は、郭ではなく韓を候補に推した。もしも郭が国民党の候補に選ばれていたら、蔡総統の再選はもっと難しかったかもしれない。

 台湾の学生連合会によると、学生たちの多くは、期末テストの前に帰郷して投票したという。そして、学生の85%が蔡英文に票を投じた。彼らを投票に駆り立てたのは、香港の学生たちだ。昨年6月から香港で続く「逃亡犯条例改正案」反対の大規模な抗議運動で、「今日の香港は、明日の台湾」との危機感が台湾住民の間で高まり、これにより、低迷していた蔡総統への支持率が劇的に回復したのだ。

 香港で抗議運動を続ける学生たちは、総統選の投開票前に台湾入りし、「香港で自由が揺らぐ現状を台湾人に伝え、一国家二制度で何が起こったかを知ってもらい、投票の参考にしてほしい」などと訴えた。こうしたことはこれまでになかったことで、香港と台湾の学生たちの連携が、今回初めて具体的行動として顕れた。

 中国の習近平国家主席は、昨年1月2日の演説で「一国家二制度台湾法案」(香港の「一国家二制度」を台湾に適用するもの)について語ったが、投票直前の今年1月2日に行った演説では、これを封印。逆効果になることを懸念したのだろう。

 米国の動きも、中国にとって痛手となった。ペンス副大統領は演説で「我々は苦労して手に入れた自由を守ろうとしている台湾と共にあり続ける」と語り、米国議会も昨年12月に『国防権限法』を可決、中国による台湾の選挙介入や浸透を阻止することを明示した。習主席との交渉で“前のめり”になりがちなトランプ大統領と違って、米議会は一貫して台湾支持の立場を堅持している。

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