メッキが剥がれた小泉進次郎が名宰相になるには “敵”は田中角栄、山本太郎…

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父・純一郎氏も対峙した田中角栄の“亡霊”

 規制改革の観点でいえば、平成期に議論の俎上にあがってきたルールの多くが、昭和期に生まれた。道路三法(道路法、道路運送車両法、道路交通法)、自動車重量税法、テレビ各局の県域免許、宅地建物取引業法、「福祉元年」政策による年金、医療の大盤振る舞い……枚挙にいとまがないが、インフラ整備や社会保障、各種の営業の自由を許される業法といった、いまの社会の基盤ともいえる法律や制度を作ったのが田中角栄だ。自ら提出した議員立法だけでも33本。閣法も含めて成立に関与したものを合わせると、一説には100本を優に超える。

 戦後の混乱期から高度成長へと押し上げるうえで、社会基盤整備に必要だった点では、それら「角栄法」が原動力になったが、いつしか財政赤字の元凶となり、既得権を生むようになる。そして平成以後の低成長や新産業創出の必要といった時代の変化の中、角栄の政治的遺産が「亡霊」となって令和の日本にも取り憑いているのだ。

 ちなみに私が「角栄法」への問題意識をもったのは一冊の本だ。トランプ政権の分析で定評のあるアゴラ執筆陣の政治アナリスト、渡瀬裕哉氏にその存在を教わり、たまたま版元が新潮社だったのだが、タイトルは『小泉改革VS田中角栄』。ジャーナリスト村野まさよし氏が小泉純一郎政権2年目の2002年に上梓した調査報道の力作だ。同書では「角栄氏によって誕生した各種の法律の呪縛の実態を一つ一つ明らかにして、国全体として呪縛地獄から脱出するようにしなければ、日本の再浮上はありえない。それが、小泉内閣の使命だ」(181ページ)と喝破している。

 村野氏がゲキを飛ばした小泉首相はその後、郵政民営化、医療制度改革、株式会社の農業参入など健闘し、「新自由主義」と左派から酷評された。しかし、それほどの改革路線であっても、解雇規制緩和や電波改革(電波オークションの実施など)といった「本丸」には踏み込めず、角栄の亡霊を一掃するには至らなかった。

 もし小泉進次郎氏が将来、宰相として、安倍晋三氏、そして父・純一郎氏を超えるとすれば、「角栄法」の多くをどこまで見直せるかだろう。先日亡くなった米経営学者クレイトン・クリステンセンが提唱した「破壊的イノベーション」は、いまの日本政治にこそ求められている。

 しかし現実には、日本社会は角栄の作った制度に安住し、せいぜい改善(クリステンセンの言う「持続的イノベーション」)に留まってきたから、デジタル化とグローバル化に遅れをとった。それどころか、定期的に「角栄ブーム」が出版やテレビで勃興するなど、ノスタルジーに浸っている。

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