石破茂、前原誠司に続け… 公明党が企んだ“鉄道マニア”取り込み戦略の迷走

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 毎年恒例になっている東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)は、強豪校・青山学院大学が大会新記録で優勝を飾った。今大会の見所は多々あり、新聞・スポーツ新聞、テレビなどでも大きく扱われた。その中でも異色のにぎわいを見せているのが、創価学会の機関紙・聖教新聞だ。

 箱根駅伝3度目の挑戦となる創価大学は、往路7位総合9位と大健闘。そして、初めてのシード権を獲得した。

 箱根駅伝は関東地方の大学が覇を競う一大会に過ぎないが、その知名度は群を抜いている。箱根駅伝で好成績を収めた大学は人気が上がり、志願者は増える。そうした効果を狙って、陸上に力を入れる大学も少なくない。

 創価大学は、その名前の通り創価学会が設立した大学だが、設立当時は宗教アレルギーが強かった。志願者はもっぱら創価学会の学会員に限定されていた。志願者が集まらないという状況は創価高校も同様だった。

 志願者を増やすには、宗教アレルギーを緩和するしかない。創価学会がとった拡大戦略のひとつが、野球部の強化だった。これは池田大作名誉会長の発案とされるが、模範にしたのが清原和博や桑田真澄など多くの一流野球選手を輩出したPL学園だ。

 当時のPL学園は、選抜高等学校野球大会(春の甲子園)や全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)の常連校。野球が強いという評判が広まれば、野球の強豪と語られるようになり、宗教校のイメージは薄らぐ。

 創価学会もこれに倣い、創価高校の野球部強化に乗り出して甲子園を目指した。創価学会の目論見は実り、1983年には夏の甲子園の西東京大会で優勝。初出場を果たした。

 以降、創価高校は1992年、1994年、1995年、2007年に夏の甲子園大会に出場。近年は優勝から遠ざかっているものの、野球の強豪校というイメージは定着している。

 野球部強化によって創価高校の宗教色を払拭することに成功した創価学会は、次に創価大学のイメージ向上を狙った。その役割を果たすコンテンツとして、箱根駅伝が選ばれることは自然な流れと言える。そして、今大会で創価大学は悲願を達成。いや、創価学会の悲願というべきなのかもしれない。

 宗教アレルギーを取り除くことに躍起の創価学会は、高校・大学のみならずあらゆる場面で信者獲得、創価学会風に言えば広宣流布に地道な努力を積み重ねる。そして、そのターゲットとして公明党は鉄道に手を伸ばした。

 ゴールデンウィークに毎年開催される恒例のニコニコ超会議は、首相や大臣、政党の代表・幹事長といった大物政治家が視察のために来場する。そして、かつては自民党や公明党、共産党といった政党ブースの出展もあり、それぞれの政党が党勢の拡大に努めていた。

 2017年の公明党ブースでは“鉄っちゃんはつらいよ”と題したトークイベントが実施された。そこではニコニコ超会議のためだけに斉藤鉄夫元環境大臣・伊藤渉衆議院議員・新妻秀規参議院議員・三浦信祐参議院議員の4人がこうめい鉄道部を結成。来場者を前に、鉄道談義に花を咲かせた。

 斉藤元環境大臣は「自分の名前が“鉄夫”だからテツである」と笑いを誘って時刻表マニアであることをカミングアウト。

 伊藤渉議員はJR東海の社員で東海道新幹線の運転経験があることを誇示。永田町には多士済々の議員がいるものの、「おそらく、新幹線を運転したことがあるのは自分だけ」と胸を張った。しかし、伊藤議員は新幹線の運転経験があるものの「テツではないので、みんなの話についていくのが精一杯」という本音も吐露している。

 新妻秀規議員は川崎重工とボーイング社に勤務経験があり、宇宙開発や航空工学の知識が豊富。鉄道談義でも理系らしい視点から鉄道を熱っぽく語った。

 防衛大学校で准教授として教鞭を執ったことのある三浦信祐参議院議員は、その経歴から軍オタという印象を受けなくもない。しかし、鉄道も軍もメカ的な要素が共通しているので鉄オタのなかには軍オタを兼ねる人も珍しくない。三浦議員もその一人なのだろう。

 こうめい鉄道部はニコニコ超会議のためだけに結成された。そのため、会議後は特に目立った活動をしていない。

 2019年1月、三浦議員が「こうめい鉄道部」のハッシュタグをつけたツイートを投稿。それに連動し、公明党の宣伝アカウント「こうめい部員」がこうめい鉄道部の再始動を宣言した。ようやく、こうめい鉄道部が鉄活動に本腰を入れると思われたが、宣言後も鉄道に関するツイートはあまり見られない。

 国会議員では、自民党の石破茂衆議院議員と国民民主党の前原誠司衆議院議員が鉄オタの二大巨頭として知られる。公明党には目立つような鉄オタ議員が不在。唯一、こうめい鉄道部の三浦議員だけが定期的に鉄道ネタをツイートして孤軍奮闘している。

 甲子園・箱根駅伝という人気コンテンツを介して宗教アレルギーの緩和・党勢拡大・信者獲得につなげる創価学会・公明党の目論見は成功しているが、鉄道を介した戦略は成功しているとは言い難い。

 こうめい鉄道部の迷走は続くよ、どこまでも。

小川裕夫/フリーランスライター

週刊新潮WEB取材班編集

2020年1月14日掲載

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