メジャー1年目「松井秀喜」の本塁打は16本、「筒香嘉智」はこれを上回る可能性がある

スポーツ 野球 2020年1月6日掲載

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 12月16日(日本時間17日)、ポスティングシステムでメジャー移籍を目指していた筒香嘉智のレイズ入りが発表された。二刀流の大谷翔平(エンゼルス)を除くと、日本人野手としては久しぶりのメジャーリーガー誕生となる。これまでアメリカで活躍した日本人野手はイチロー(元マリナーズなど)を筆頭に三拍子揃ったいわゆるリードオフマンタイプが大半で、筒香のような強打者タイプで結果を残したのは松井秀喜(元ヤンキース)くらいである。果たして筒香は松井に次ぐ成功例となれるのか、またそのために重要なポイントはどこにあるのか、二人の成績やチーム事情などから探ってみたい。

 まず、松井と筒香の日本での通算成績と獲得したタイトルは以下の通りである。

・松井秀喜(実働10年)
1268試合 1390安打332本塁打889打点46盗塁 打率.304
首位打者1回 ホームラン王3回 打点王3回

・筒香嘉智(実働10年)
968試合 977安打205本塁打613打点5盗塁 打率.285
ホームラン王1回 打点王1回

 筒香の成績も立派なものだが、やはり比較すると日本での実績では松井の方が明らかに上であることは間違いない。特に、アメリカにわたる直前の4年間は完全に安定期に入っており、まさに日本最強のスラッガーとして君臨していた。筒香も2016年にホームランと打点の二冠に輝いたものの、その後の3年間はそこまで飛び抜けた成績を残すことができていない。そしてもう一つ気がかりなのが、松井が実働10年間で6回の全試合出場を達成しているのに対して、筒香は一度も達成していない点だ。大きな故障はないものの、毎年、コンディション不良を訴える時期があり、そのことも不安材料といえる。

 次に松井の移籍1年目の成績は以下のようになっている。

・松井秀喜1年目(2003年)
163試合 179安打16本塁打106打点2盗塁 打率.287

 日本で最高のスラッガーが来るということで地元メディアの期待も高かったが、ホームランは前年の日本での50本から16本へと激減。本拠地開幕戦でいきなり満塁ホームランを放ったものの、その後はゴロアウトを量産して『ゴロキング』と批判されたことを覚えているファンも多いだろう。この時の松井の成績が、いまだに日本人の強打者タイプがアメリカでは成功しないというトラウマになっていると言っても過言ではない。

 しかし改めて見てみると翌年には31本塁打を放ち、その後も4回20本塁打をクリアしている。メジャー実働10年間で175本塁打というのは立派な成績といえるだろう。そして松井にとって大きな足かせとなったのがヤンキースという特殊なチーム事情だ。

 勝てば称賛を浴びるものの、負ければこれでもかというくらいに叩かれる環境であり、そこで存在感を出すためにはホームランよりも打点という考えが働いたことは本人のコメントからも十分に察することができる。ヤンキースでプレーした7年間で100打点をクリアしたシーズンは4回を数えており、その勝負強さは際立っていた。しかし、逆に言えば、優勝を宿命づけられていないチームで伸び伸びとプレーしていれば、ホームラン数も伸びた可能性は高い。

 それを考えると、筒香が移籍するレイズは1998年にメジャーに参入した新しい球団で(当時の名称はデビルレイズ)、2008年にリーグ優勝を果たしているが、ワールドシリーズ制覇はない。同じ地区にヤンキース、レッドソックスという名門がいる中で苦しむシーズンが多いが、過去2年間は大きく勝ち越しており、今年はワイルドカード2位でポストシーズンに進出するなど健闘している。ファンやマスコミのプレッシャーはそこまで強くないが、チーム状態は悪くないというのは筒香にとっては大きなプラスになるだろう。

 もう一つ筒香にとってのプラス要因は、早くからアメリカでのプレーを意識して準備してきたという点である。オフには志願してドミニカのウインターリーグに参加。2015年の世界野球「プレミア12」、2017年のWBCでは中軸としてプレーするなど、国際大会を多く経験しているのも松井にはない経験である。その経験は日本でプレーする外国人投手との対戦にもよく表れており、ジョンソン(広島)から10打数5安打、ロメロ(中日)から9打数3安打2本塁打と左投手からも好成績を残している。このあたりは準備の賜物といえる。

 以上のことから考えても、筒香が松井の1年目を超える成績を残す可能性は決して低くないと思われる。不安は先にも述べたコンディション面だが、レイズの本拠地であるトロピカーナ・フィールドはドーム球場であり、夏場でも快適な温度でプレーできるというのも大きな追い風となるだろう。念願と言えるアメリカの舞台で、横浜育ちの強打者が大暴れしてくれることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集