北海道胆振東部地震は「人造地震」だったのか 日本ではタブー視され研究が進まないワケ

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水害を防いでくれるダムは地震の加害者にもなりうる

 19年10月に発生し、未曾有の被害をもたらした台風19号では、ダムによって水害から守られた地域もあった。しかし、先述のようにダム建設が人造地震を引き起こしてしまう可能性もある。

「ダムが地震を引き起こすメカニズムは、貯水が地下に染み込んでいくことや、水の重量が関係すると考えられます。08年に中国で発生し、8万人以上の死者を出した四川大地震も、近くに建設された紫坪埔ダムの影響を指摘する研究者もいます。これは実際に日本でも実験が行われていて、地下に水を注入すると地震が発生することがわかっています」

“不都合な真実”を伏せるべく、ダムを管理する電力会社は、地震のデータを公表しないこともしばしばある――と、島村教授はいう。

「電力会社はそれぞれのダムに地震計を設置していますが、データの多くは非公開となっています。たとえば16年8月末~10月の間に、元々、地震が少ない地域であるはずの富山県の黒部ダム近辺で、400回以上も地震が起きました。黒部ダムは関西電力が発電用のダムとして建設しましたが、同社が地震計のデータを学会に出したことは一度もありません」

 データを公表すれば地震の研究も進むはずだが、それをしないのは甚だ疑問と言わざるを得ない。同様のことは、前出のCCS技術を扱う民間企業「日本CCS調査株式会社」(電力会社、石油元売会社、エンジニアリング会社など数十社が出資)にも言えるそうだ。

「18年9月の北海道胆振東部地震では、CCSの実験を行っていた会社は『地震発生とは関係ない』といち早く発表しました。これは個人的な見解ですが、すぐに声明を出したのは、薄々は実験と地震との因果関係に気づいていたからではないでしょうか」

 国や電力会社、日本CCS調査会社などの協力が得られない以上、日本で人造地震の研究が劇的に進む可能性は低い。

「少なくとも今の日本では、ハザードマップに人造地震の危険地域を組み込むといったことは不可能だと思います。読者の皆さんにできることは、まずは人造地震の存在を知ること。そしてダムやCCSの実験場などの近くに住んでいる人は、地震のリスクを考慮した上で防災対策を施すようにすることです」

 海外では存在が認識されている人造地震が、地震大国日本でタブー視されている。人造地震が本格的に日本で議論されるようになるまでに、あとどれだけの日本人が地震によって被害を被るのだろうか。

取材・文/岡田光雄(清談社)

2020年1月3日掲載

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