宮坂学(東京都副知事・ヤフー元会長)【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか】

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公共施設を利用する

佐藤 小池百合子都知事は前々から声を掛けていたのですか。

宮坂 ヤフーの社長を退いてライドシェアやブロックチェーンの仕事をしていた時、小池知事から東京のデジタル化について講演する機会をいただきました。それを覚えていてくださったのか、今年5月、ヤフーの会長を辞めることを発表した時にお誘い頂いた。

佐藤 どういう依頼でした?

宮坂 7月に参与として登庁した初日、知事室で言われたのは「5Gやりたいのだけど、都庁まとめて」と。

佐藤 行政機関は必要に迫られるまで動かないですからね。小池さんは都庁の中からじゃ無理だとわかっているんですね。

宮坂 東京はデジタルでもっとよくできると思っていました。これからはやっぱり都市全体がインターネットにつながる時代になっていく。8月に「東京データハイウェイ」構想を発表させてもらいましたが、4Gでも5Gでも、まずは東京で電波のつながらないところをなくそうと思っています。

佐藤 アンテナがいっぱい必要になってくる。

宮坂 東京都はたくさんスペースを持っています。学校、図書館、公民館、公園などに加えて、都道もある。都道は2400キロもありますから、いろんな可能性があります。まずはこうした公共空間で速いインターネットが使えるようにしたい。さらには都立高校などに、高速のWi-Fiを入れるとか。Wi-Fiは、お金がかからないベーシックなサービスですから、そういうものは整備していきたい。

佐藤 それはいいですね。

宮坂 まだ東京でもつながらない場所があるんですよ。一方で、都有地に立つアンテナは40しかない。

佐藤 それだけですか。

宮坂 電気が通じていて基地局が置けるような土地や建物をリストアップしてもらったら、第1弾だけでも1万3千カ所も出てきたんです。それを通信業者の皆さんにお見せして希望を募った。その結果、120件くらいの応募が来ました。

佐藤 段階的に進めていかれる。

宮坂 ええ。第1弾だけでもこれまでの3倍です。どうして都が民間企業を支援するのか、と言われるかもしれませんが、やっぱりインターネットにつなげることは、都民の誰もがやってほしいことだと思うんです。

佐藤 水道でも道路でも、公共インフラは行政が税金で整備しますから、違和感はないと思いますよ。

宮坂 都市はいろんなネットワークでできています。上下水道のネットワークや道路網、電力網など、都はいろんな網を作る。都の役割をインフラ整備とするなら、今作るべきはインターネット網しかない。

佐藤 その通りですね。

宮坂 2018年にインターネット利用者が世界の人口の半分を超えました。しかも毎年8千万~9千万人ずつ増えています。

佐藤 しかもバイオテクノロジーと結びつくなど、さまざまな可能性がある。そうなるとさらに爆発的に広がっていくでしょうね。

宮坂 そうなりますよ。

佐藤 どんな時代も人間の価値観で変わらないのは、生命、身体、財産の順番だと思うんです。インターネットで稼ぐのは財産の話ですが、これが命に関わるとなったら、位相が大きく変わってきますよね。

宮坂 IoT(Internet of Things)と言いますが、そのThingsってどこにあるかを考えると、それは都市なんです。しかも世界人口の半分が都市に住んでいる。

佐藤 都市化の流れは止まらないですからね。

宮坂 未来予想では、人口の7割くらいが都市に集まります。でもまだまだ都市はインターネットにつながっていない。

佐藤 東京都でそこをやる。

宮坂 将来的には、都全体、社会全体が通信ネットワークの中にくるまれて、いろいろなものとつながる未来がくるのだと思いますね。今の若い人は、昔の、インターネットにつながっていないパソコンって想像できない。何に使っていたんだろうと思っています。同じように今から30年後には、昔はインターネットにつながっていない車があったんだよとか、つながっていない建物があったんだよ、と言われるようになるでしょうね。

佐藤 私たちの頭も融合することはできないけれども、インターネットでなら横につなげることができますからね。

宮坂 やはり、世界の半分がつながってしまったというのは、とてつもなく大きなことなんですよ。それもいまは手のひらのスマートフォンで世界がつながっている。

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