「伊藤詩織さん」両親が初めて話した苦難と葛藤

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 ジャーナリスト・伊藤詩織さん(30)が元TBSワシントン支局長の山口敬之氏(53)を訴えた民事訴訟。結果は詩織さんが勝訴した。見守ってきた両親が初めて明かす「苦難と葛藤」――。

 準強姦逮捕状が、当時の中村格(いたる)警視庁刑事部長に握り潰されることになる事案が発生したのは、2015年4月4日未明。

 詩織さんの母親(57)は、彼女から最初に事実を打ち明けられた際の心境を、

「(性的暴行から)1カ月後くらいですね。娘が打ち明けてくれたのは。正直、びっくりしましたし、その後、どうしたらいいのだろうって……」

 と振り返る。詩織さんは17年5月に本誌(「週刊新潮」)で初めて事件を告発し、その後、会見で実名告発に踏み切った。

「最初に新潮に話をすると言った時、1週間くらい喧嘩というか、話し合いをして。その後、記者会見をやると言った時も、反対し続けました。でも、“なんとしても、このまま終わらせたくない”と(詩織さんが言った)。娘の性格もよく知っているものですから、とりあえず、渋々……」

 と父親(60)が複雑だった胸中を明かせば、母親も、

「記者会見のあとは、妹や弟といった家族はやはり反対していたものですから。あれから、きょうだいの仲も今までとは違って、しっくりいかなくなるところもあったんですけど、こういういい判決が出て、本当に少しずつ、また家族に戻っていけたらなと思います」

 としつつ、こう続ける。

「私だったらできなかったんじゃないかなって。その勇気には、娘ながら、本当に誇らしく思っています。いろいろ、心配もありましたけど、本当に、ここまでよく頑張ってきたなって褒めてあげたいと思います」

 逮捕状については?

「逮捕状が取り下げられた、というのは本当に信じられないですね。その逮捕状はどこに行ってしまったのか。本当にそこはいまだに、不信感があります」(同)

「軽い気持ちで(中村氏は)止めたのでしょうし、相手にされていなかったんでしょう。(そういう形で捜査がされなかった被害者は)たくさんいるのでしょうね」(父親)

 山口氏に対しては、

「なぜ、私たち家族がこのようなことに巻き込まれるのかと。夢にも思っていなかったですし。本当に、世の中の母親なら一番、自分たちの娘にあって欲しくない事件だと思うんですね。だから私が山口に言いたいのは、あなたにもし娘がいたらどうでしたか(ということ)。反対の立場だったら、どういう対応をしていましたかって。本当にそこはずっと言いたかったな、と思います」(母親)

 両親の苦難と葛藤も消えないままである。

週刊新潮 2020年1月2・9日号掲載

ワイド特集「窮鼠猫を噛む『女力』」より

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