【伊藤詩織さん事件】山口敬之氏はなぜ不起訴に? 疑わしい検察の「やる気」

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検察のやる気のなさ

 例えば、2人がハシゴした2軒はいずれも山口記者が常連なのだが、強制捜査になれば当然、追及は厳しいものとなり、その店の関係者は彼の肩ばかりを持っていられなくなるというわけだ。

「今回は在宅での捜査になってしまったので、証拠の集まり方は弱かったのだろうと思います。実際、被疑者を逮捕している事件と逮捕していない事件では、担当検事の力の入れ具合も変わってきます。もしも、本件で被疑者が逮捕されていれば、そのドアマンについても、警察から取り調べがなされて『員面調書』が作成されただけでは終わらなかったのではないかと思います。検察官自身が取り調べて『検面調書』まで作成していた可能性はありますし、そうなっていれば、起訴を判断する際の重要な証拠のひとつにもできたのではないでしょうか」(同)

「検面調書」を取っていない時点で、検察のやる気のなさがわかるというものなのだ。逮捕状を握り潰す判断が、かくも人の人生を翻弄するものかと、改めて思い知らされる解説である。

 勝訴判決の前、詩織さんは週刊新潮の取材に応じてくれた。まずは、17年5月の実名による告発会見から振り返って、

「あの時は、自分の生活がこれからどうなってしまうのか全く想像ができないままその場に臨みました。時間が経過し、今は自分の生活や仕事も少しずつ取り戻しながらも、この事件に向き合えていることは私にとって大きなことで、周囲の支援してくださる方に感謝しています。この民事訴訟を通じ、私が求めていたのは裁判の判決自体ではなく、それまでの刑事事件の手続きでは分からなかった部分を明らかにすることでした。ホテルのドアマンの方がお話ししてくださるようになったのも、訴訟を提起したからだと思っています」

 法廷で、山口記者が事件後に詩織さんに宛てたメールと陳述書の中身に齟齬があることなどが明らかになったのも、訴訟を提起した成果と言える。

「裁判で色々な証言や主張が公になり、そうしたことからも、訴訟はとても有意義なものでした。またこの間の様々な出会いから、事件のトラウマにどう向き合えばいいのかヒントを貰うこともできました。性犯罪に関する刑法の規定はまだまだ改善の余地があり、見直しは必要だと思っています。他にも被害者のサポートなど変えなければいけない部分はかなりあるはずです。でも、2年前と比べると、こうした議論が活発になってきたのは本当に良かったことだと思いますし、あの頃に見ていた景色とは確実に変わってきている部分もあるなと感じています」(同)

 もう一つ確実だと言えるのは、闇から闇に葬られた供述調書が息を吹き返すときを待っているということだ。

週刊新潮 2019年12月26日号掲載

特集「被告の援軍は『安倍官邸』『次期警察庁長官』 『伊藤詩織さん』レイプ裁判に判決! 闇に葬られた『ドアマンの供述調書』」より

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