「伝統」を新しく飾る

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 正月に雛祭りに端午の節句。

 季節の行事は、華やかな飾りや人形でお祝いしたい。ただ、置く場所や手入れに不安が残ってしまう……。

 そのためか、意外なブランドによる伝統行事を飾る製品が人気を博しているという。その制作現場を写した。

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 イングランド中部の都市ストーク・オン・トレントにある、英国王室御用達の陶磁器ブランド「ウェッジウッド」の基幹工場。その一室で、職人が制作しているのは、白馬に乗ったナイト、ではなくサムライの型だ。

「『リトルサムライ プレート』という日本オリジナルの製品に使用される型なんです」(同社のフィオナさん)

 陶器に貼りつけるレリーフの型を33年間作り続けてきた彼女の手になる躍動感あるレリーフを、ウェッジウッドを代表するジャスパーという素地に載せ、窯で焼く。そうして出来上がった飾り皿は見事な調和を見せる。

 絵柄はこの他に、2020の文字が入った「イヤープレート」、来年の干支の鼠がデザインされた「エトトレイ」、お雛様とお内裏様が描かれた「雛ドール プレート」がある。

 これら季節を彩るジャスパーのシリーズは、場所を取らず、片付けの手間も少ない。現代の日本のライフスタイルでは、雛人形や兜などを親族に贈ることは少し躊躇(ためら)ってしまうが、こちらなら気軽にプレゼントできる。洋間・和室どちらにも溶け込むデザイン性の高さもあって、人気を博している。

 聞けば、ウェッジウッドのデザインチームは膨大な過去のデザインから、現在の需要に沿った商品の着想を得るのだという。創業260年の伝統あるブランドが生み出した、日本の伝統行事の新しい飾り方。珍しい洋和折衷の品である。

撮影 在本彌生

「商品に関するお問い合わせ先/ウェッジウッド tel:03-6380-8159 https://www.wedgwood.jp/

週刊新潮 2019年12月19日号掲載

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