【ルポ・重婚】彼女が男とその妻との奇妙な同居生活の末に妊娠出産した理由

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恋人の妻と打ち解け連帯し妊娠出産

 こういった「付き合った相手が実は既婚者だったことが後から判明した」という話は、たまに耳にする。なかには、彼氏の言動をいぶかしんだ女性側が、何度も「結婚してないよね」と確認して「独身だ」というから、安心していたのに、やはり既婚者だったという酷いケースも聞いたことがあるが、恋人が既婚者であることが判明して、水嶋さんはどういう行動に出たのだろうか。

「私は、『結婚してるんだったら、別れてもいいよ』って言ったんですけど、向こうは『嫌だ、君と結婚したい』って。けど、彼と奥さんとは、遠距離恋愛を経て結婚をしたばかりだったんです。だから奥さんは、東京に来る準備をしてる状態で、住んでいたマンションもすでに引き払ってしまったと。東京に来て生活したいと思って、いろいろを整えてたのに、いきなりキャンセルしろっていうんじゃ、可哀想じゃないですか。

 私は結婚願望はさほどなくて、彼と結婚はしなくてもいいと思っていたので、『私は私で、あなたと付き合い続けてもいいけど、彼女の希望も叶える方向にして欲しい』って考えを彼に伝えて。奥さんも、ちゃんと話がしたいので、とりあえず東京には来るっていう流れになりました」

 こうして実現することになった、妻との面談は相当に揉めたと思いきや、意外にもそうではなかったという。

「向こうはそれこそ、『コノヤロー!』っていう感じできたんだけど、私がいい人だったから、揉めずに済みました(笑)。お互いに『すみません』『いや、あなたは悪くないわ』っていうふうに落ち着いて、とりあえず3人で生活し始めることになったんです。奥さんには、他にこっちに頼れる人がいなかったから、それ以外の選択肢がなくて」

 こうして夫、妻、内縁の妻という奇妙な「重婚」関係にある3人の同居生活が始まったが、これが意外と上手くいったという。

「奥さんが家事を分担してくれて、私があまり得意じゃない部屋の掃除をしてくれたりして、すごく助かって。ご飯を作ってくれて、一緒に食べたりもしていました。ただ、私と奥さんが揉めなかっただけで、彼とは修羅場になってましたよね。

 なので、『慰謝料とか、ちゃんと払ってあげなよ』って、私のほうからも奥さんに加勢して。それに奥さんに飲食店の従業員の仕事を、紹介してあげたりもしました。私は人が生きやすい状態を作るのが好きなので、困っている人が目の前にいる時に、何か助けられることがあれば助けたいんです」

 恋人の妻と打ち解けて、連帯することが出来たのは、これまで性風俗で働く多くの女性たちの居場所を作る活動をしてきた水嶋さんの本領発揮というところだが、こうして三角関係が継続する中、約1年後に水嶋さんは佑さんの子を妊娠して出産。大人3人に赤ちゃんが加わった形で同居は続き、さらにその2年後に、今度は2人目の子を出産することに。このような、先が見えない不安定な状況にありながら、水嶋さんが、二度の妊娠や出産を望んだ理由とは何だったのだろう。

「子どもが欲しかったんです。私が育った家が、いい環境じゃなかったから、自分で新しい家族を作って幸せになりたいっていう、家族に対しての理想、願望があったからだと思います。結婚しなくてもいいし、養子でもいいから、子育てをしたいってずっと思ってました。それに、彼はすごく頭のいい人だったので、『この人の子どもなら』って思う部分も正直ありましたね」

 水嶋さんの人生のマストに“結婚”はなかったが、“子育て”と、“家族を作る”ことはあった。無事に念願が叶ったところ、時期をほぼ同じくして、ようやく妻の就職が決まり、さらには外に恋人も出来て、そちらと再婚したいという希望から、佑さんと離婚して家を出ていくことに。ようやく父と母、子がふたりという、家族4人暮らしになったものの、その頃には、水嶋さんの心の中では、佑さんと結婚をしたいという気持ちは、すっかりなくなっていたという。

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