「安倍総理ベッタリ記者」山口敬之逮捕を中止した、次期警察庁長官の忖度捜査

国内 政治 週刊新潮 2019年11月28日号掲載

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もうひとつの忖度捜査

 その「救済案件」こそ、先に触れた総理ベッタリ記者の準強姦事件であり、中村刑事部長によるもうひとつの忖度捜査である。

 15年4月、TBSのワシントン支局長だった山口記者が一時帰国した折、TBSに働き口を求めていたジャーナリストの伊藤詩織さんと会食した。彼は当時、安倍総理に最も食い込んでいた人物である。そのホームグラウンドである東京・恵比寿で2軒目までハシゴしたところから意識を失った彼女は、その後タクシーに乗せられた。車中で彼女は嘔吐しつつも、タクシーは港区内のホテルへ。翌日未明、性行為の最中に目が覚めた。

 詩織さんの刑事告訴を受け、高輪署は捜査を開始。その年の6月、準強姦容疑での逮捕状を携えた高輪署の捜査員が、機上の人となっていた山口記者を逮捕すべく成田空港でスタンバイしていた。しかし、その直前に逮捕は中止された。それは、中村氏の指示によるものだった。

 警察庁の関係者によると、

「捜査1課から、捜査を担当する高輪署の刑事課長に“この件はこちらで引き取る”旨の連絡があったようです。課長は“捜査介入だ”なんて言えません。“はい、わかりました”ということで、諒とするわけです」

 捜査を継いだ警視庁からの書類送検を受けた東京地検は、ほぼ1年後の16年7月に不起訴と判断。詩織さんは17年5月、検察審査会に審査申し立てを行なったものの、9月に「不起訴相当」の議決が出ている。

 中村氏ご当人はかつて週刊新潮にこう話していた。

――どうして捜査の中止を命じられたんですか?

「具体的な中身は申し上げられませんけど、捜査の指揮として当然だと思います」

――捜査が中止になったということについては?

「まあ、あのう、非常に、捜査としては適切な方向に、自分として判断した覚えがあります」

――なるほど。逆に、山口氏の当時の立場が問題だったんですかね?

「違います、違います。事件の中身として、私が判断(した)」

――身柄を取るには至らないという判断をされたということですね?

「それはあの、その後、その事件がどういう評価を受けているか、最後……」

――そうですね。不起訴処分になっていますね。

「そう。事件としてはそうなっているんですね。はい」

――安倍総理や菅官房長官への忖度もなかったし、その意を受けたということもなかったのですね?

「一切ありません。そんなこと、とんでもない話です」

 山口記者を批判する漫画を描き、目下、彼から名誉毀損で訴えられている小林よしのり氏に感想を求めると、

「ドラマの『相棒』とかを観ていたら、警察組織内の悪ばかりを一所懸命、取り上げているんですよ。それはドラマだからだと思っていましたが、今回お聞きした件は、本当に組織が腐敗しているんだな、という感じです。この件に限らず、官僚組織があちこちで安倍総理に対する忖度をやっているんですけど、本当に由々しき事態だと思います」

 小林氏は、官邸が内閣人事局を通じ、高級官僚の人事を握ってしまっていることが忖度の理由と説く。

「内閣人事局という制度は、民主党の時にやろうとしていたものだと思います。安倍政権はそれを自分たちに都合よく利用し、官僚をぜんぶ自分の子飼いにしてしまった。官僚たちは人事ばかりを気にして、出世したいから忖度がはびこるようになってしまったというわけです。誰かを罪に問うか問わないかまで恣意的に決められてしまうというのは、本当に恐ろしいことですよ。この件は、伊藤詩織さんのケースとも十分に関連がある話だと思います。詩織さんの場合は逮捕直前で、逆に捜査が中止されましたが、それはどう考えてもおかしい。裁判所から逮捕状が出ていたわけですから」

 一連の件を釣氏に尋ねると、中村氏からの捜査指揮を否定したうえで、こう回答した。

「法と証拠に基づき公正かつ適正に捜査指揮を行ってきた」

 釣氏は現在、警察学校長である。どのような思いで職員に訓示を垂れ、教育するのだろうか。

 そして今回、中村氏を直撃すると、

「あのー取材は私、受けません、個別の取材、(個別の)事件について。お願いします」

 とし、この後、

「お尋ねのあった件の捜査に関わっていない」

 と書面で回答した。

 こんな人物が全国警察のトップになっていいのだろうか。

特集「『官邸の番犬』が前代未聞の忖度捜査! 安倍総理『秘書ご子息』のケンカに捜査1課を投入した次期『警察庁長官』」より

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