スマホで注文、タッチで会計……ただ今モバイルオーダーが飲食業界で急増中

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行列が解消され、店の人件費削減も可能に

 モバイルオーダーは、テイクアウト向け以外にも、店舗内で利用できるイートイン向けのものもある。それらは、どんな需要があるのだろうか?

「いまのところ、モバイルオーダーで一般的なのはテイクアウト向けですが、弊社では、スポーツの試合会場の店舗に、サービスを提供しています。たとえばJリーグの試合で、クラブチームの出店ブースに導入した例があります。お客さまにはあらかじめオーダーと決済をしていただき、ハーフタイム中や試合後に、商品を受け取りに行く。行列が激減し、店舗スタッフはもちろん、お子様連れのお客さまにも好評です」

 dinii社では、すでにJリーグの川崎フロンターレなど6チームと契約。今後はプロ野球などにも拡大していく予定だそうだが、他のサービス事業者の参入も予想されるため、競争がますます過熱しそうだ。

 さらに、イートインの需要も高い。

「最近はタブレットで注文ができる居酒屋がありますよね。とはいえ、お店側がタブレットを導入するコストは決して安くありません。そこで弊社では、店舗にQRコード決済端末を置いてもらい、お客さまのスマホ上で注文と決済をしてもらうサービスを行っています。タブレットと同じ要領で、スマホ注文ができるわけです」

 店側には、注文を取るスタッフの人件費や負担をカットでき、レジの手間も省くことができるメリットもある。

「とくに人件費の節約のメリットが大きいようです。賃金の低い外国人従業員を採用したとしても採算がとれないと、弊社のイートイン型サービスを導入する店舗もあります。モバイルオーダーは飲食店の人手不足解消にも寄与するのではないかと思います」

 ある飲食店では、注文のたびにスタッフが階段の上り下りを強いられていたが、モバイルオーダーのおかげで、その回数が激減したという。店側は人件費のほかに求人コストも抑えることができるし、シフト管理などの作業も少なくなるため、より経営を効率化できるといいことずくめだ。

プロモーションやマーケティングにも最適

 さらにモバイルオーダーサービスは、現場の負担軽減もさることながら、顧客情報を活用したプロモーションを展開することも可能になる。

「現金で会計していた従来のやり方では、お客さまの趣味嗜好などのデータがとれませんでした。しかしモバイルオーダーでは、お客さんの情報と注文履歴が紐付けられるので、その人の好みなどがわかり、それに合わせてレコメンドするというサービスも可能になったわけです」

 今後、キャッシュレス化がさらに進んでいくことで、モバイルオーダーサービス市場はますます拡大していくでしょう――と語る山崎氏。モバイルオーダーサービスの登場はさまざまな可能性を秘めているのだ。

取材・文/沼澤典史(清談社)

週刊新潮 2019年11月28日掲載

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