「韓国私費旅行」を職員に呼びかけ批判された愛媛県知事の言い分

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

深めてきた絆

 定例会見の場でこれらを指摘された中村時広知事は、いくらか色をなした。

「県民のみなさんにソウル線の利用を呼びかけている我々がまず汗をかくことは大事。職員には協力を呼びかけているだけで、強制でもノルマでもなく、ペナルティーもない。人事評価にも影響しません」

 言外に“バカ言うな!”との思いが滲む。きっと秘められた思いがあるはずだ。そこで、あらためて中村知事のもとを訪れると、

「ただ、“どうですか”と呼びかけただけなんです。搭乗率低下で困っているから行ける人は行ってくださいね、と。別に、行かなくてもペナルティーなどないですし。それに、公費を使ってという話でもないので、どう問題なのかが分からない。目標人数を掲げたのは相手に目安を伝えるためで、それ以上でも以下でもありません。これを行き過ぎだなどと言われてしまうのなら、なにもできませんよ」

 冗談じゃない、と言わんばかりに、熱い口調で語る。

「80%を超えていた搭乗率の内訳は、ソウルから松山が7割、その逆が3割でした。日韓関係の影響で落ち込んでしまったのはソウルから来てくれる人数です。だから、もともとは3割だった松山からソウルの分を、数カ月だけでも、少しでも上げたいという話なんです」

 続けて、こんな逸話も。

「実は、7月半ばにチェジュ航空の社長がわざわざ愛媛まで来てくれたんです。“搭乗率が厳しくなりそうだから、しばらくのあいだ、松山からのお客を増やすよう頑張ってくれないか”とお願いされました。官民一体の“オール愛媛”で誘致し、これまで絆を深めてきたパートナーには気持ちで応えたい。それが今回の呼びかけだったわけです」

 国同士とは違い、心からの握手の結果だったというのである。

週刊新潮 2019年11月21日号掲載

ワイド特集「パレードと人生行路」より

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。