即位のパレードで使われる8000万円「センチュリー」を羨望の眼差しで見る人々の正体

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御料車センチュリーロイヤル

 初代センチュリーが発売された1967年は、グループ創設者の豊田佐吉(1867~1930)の生誕1世紀であることから、センチュリーと名付けられたとされる。米国の高級車に普及していたATを取り入れ、デザインには伝統的な日本の美と重厚さを取り入れた。当時の佐藤栄作首相(1901〜1975)の公用車となり、以後、内閣総理大臣専用車となっている(現在はレクサスも併用)。

 2代目は日本の市販車として初(現在のところ最初で最後)のV型12気筒5リッターエンジンを導入。フェラーリやランボルギーニなどに使用される12気筒エンジンだが、センチュリーではあくまで静かで滑らかなエンジンを目指した。万が一、エンジントラブルが起こって片側6気筒が不動となっても、残りの6気筒だけで走ることができるという。このエンジンをもとにした「センチュリーロイヤル」が、御料車として宮内庁に納入されたのは2006年のこと。もちろん、一般発売はされない特別仕様車である。

 そして18年6月、3代目センチュリーが発売された。モデルチェンジは、先にも紹介した通り、何と21年ぶりのこと。なんとも息の長い自動車である。

 だが、身近にセンチュリーを運転している人はなかなかいない。いったいどのような乗り心地なのだろうか。

「購入するのは後部座席に座る人ですから、自ら運転する人は少ないでしょう」

 と、川原代表が語る。鳳凰倶楽部がオフ会を開催しているのは、首都圏のパーキングエリアだ。

立体駐車場は無理

 夜9時、集まったセンチュリーは初代と2代目合わせて19台。漆黒のセンチュリーが多いが、シルバー、紺、真っ白(特注)もある。それぞれ、所定の位置に止めると、クルマを磨き出す……。

「今日はちょっと少ないかな……」

 しかし、センチュリーが20台近くも集まると、その一角は異様な迫力に満ち、他車は近寄ろうともしない。そんなセンチュリーの魅力とは。

「もともとデカいセダンが好きだったんですよ。クラウンやセドリックはみんな乗ってるけど、センチュリーは見ないからね。そして乗ったら、ハマった。独特のオーラというか、醸し出す匂いとでもいうか……。僕は初代から乗り始めて4台目だけど、初期は運転席が固定されてたりしますが、2代目後期は運転席も後ろに下げられる。V12エンジンはホントに静かで、エンジンかかってるのに気づかなくて、もう1回、セル回しちゃったなんて人もいる。今回、新車が出て旧車になったけど、長い間、現行車でしたから、古くならない。みんな『運転するクルマじゃない』と言うけれど、意外に小回りも利くし、くせになる乗り味。人の目も楽しめる」(川原代表)

 駐車していると、「どなたか、いらっしゃってるんですか?」とよく尋ねられるとか。VIPが来ていると勘違いされるというわけである。だが、その駐車が難しいとも言う。

「コインパーキングや立体駐車場は、長さ5メートルまでがほとんど。センチュリー(2代目)は5・2メートルあるから、頭1つ分はみ出ちゃう。傷つけられるのも嫌だしね。かと思えば、人が管理している駐車場だと“満車”とあるのに、なぜか誘導してもらえたりすることもあるんですよ」(同)

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