札幌移転の「マラソン・競歩」はカジノの犠牲にされた 動く巨大利権

社会 週刊新潮 2019年11月7日号掲載

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 東京五輪のマラソンと競歩の「札幌開催案」と、北海道・苫小牧市の「カジノ誘致」。一見、何の関係もなさそうな両者が裏で繋がっていた――。

 あるいはこう言ってもいいかもしれない。「マラソン札幌案」は北海道のカジノ誘致を前に進めるために“使われた”と。その背景については後に詳述するが、現在、北海道の鈴木直道知事は世論などを気にしてカジノ誘致に踏ん切りをつけられずにいる。そこに飛びこんできた「マラソン札幌案」。彼の後見人的存在である菅義偉官房長官は、「マラソンをやらせてやるから北海道にカジノを誘致せよ」と鈴木知事に決断を迫った。週刊新潮10月31日号でご紹介したのはそんな情報である。

 それを踏まえた上で「マラソン札幌案」と「北海道カジノ」の動きを見ていくと、それぞれ、ここ1カ月ほどで急に慌ただしくなっていることが分かる。

 すでに報じられている通り、札幌への会場変更が急浮上した直接のきっかけは9月27日から10月6日まで中東カタールのドーハで行われた陸上の世界選手権である。暑さ対策で深夜に競技を行ったものの、女子マラソンでは出場した68選手中、28人が棄権。東京五輪でも同様の事態となることを危惧した国際オリンピック委員会(IOC)が、札幌への会場変更を検討し始めたのだ。

 大会組織委員会の森喜朗会長や武藤敏郎事務総長は、10月8日頃までにIOCのバッハ会長かコーツ調整委員長から「札幌案」を聞かされたと見られている。森会長と武藤事務総長以外に早い段階で「札幌案」の情報を把握していたとされるのは、主に以下のメンバーだ。安倍晋三総理、菅官房長官、萩生田光一・文部科学相、北海道を地盤とする橋本聖子・五輪担当相、北海道の鈴木知事、秋元克広・札幌市長。IOCが札幌への移転計画を発表したのは10月16日だったが、組織委の武藤事務総長が東京都の小池百合子知事に「札幌案」について伝えたのはその前日の15日。あからさまな「小池外し」だった。

 酷暑のドーハで世界選手権が行われていた最中の10月2日、「北海道カジノ」でも動きがあった。道議会に出席した鈴木知事が、

「(カジノの)誘致に挑戦するのか、挑戦しないのか。年内に判断する」

 と、誘致の判断時期について初めて明言したのだ。

「今年4月に行われた北海道知事選での、カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)に関する鈴木さんの公約は“道民目線を大切に”“早期に判断する”だったのですが……」

 と、北海道政関係者。

「知事に就任後は“適時適切に判断する”と繰り返すばかりで判断を先送りしてきたのです。地元紙の調査では道民の6~7割がカジノ誘致に反対している。判断を先送りにしてきたのは、その“数字”を怖れてのこと。10月2日に判断時期を明言したのは、大きな変化といえます」

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