六本木で入場料1500円の書店が大盛況 店長が明かす“人気の秘密と意外な客層”

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扱う本は1点1冊、わざと探しにくくする

 書店は本との出会いの場。ネット書店にはないセレンディピティ(思いがけない発見)がある。文喫はその点でも工夫を凝らしている。

「1点1冊しか扱っていない文喫にも平積みコーナーはありますが、そこにはそれぞれ違った本が積まれています。平積みはテーマを決めて積んでいるため、一番上の本が気に入ったら下のほうにある本も気に入るかも知れない、という具合になっています」

 また、通常の書店と違って文喫では、棚差しの本を大きさや形状(判型)で揃えておらず、「新潮文庫」や「新潮新書」といった出版社、レーベルごとの棚もない。

「大まかなテーマごとに分けて本を並べてはいますが、細かくは分けていません。仮に大分類が『映画』というカテゴリーだったら、小分類では『SF』や『アクション』といった具合には分けず、色々な種類の本をバラバラに並べることで、あえて検索性を低くしています。そうすることで、予想外の本が目に入りやすくなり、新たな発見が楽しめるというわけです。アマゾンはカテゴリーを細かく分けており、検索もしやすくなっていますが、文喫はいわばアマゾンの対極を目指しました」

 もちろん、そうした棚を維持していくには棚ごとの担当者が必要だし、独自性を打ち出すためには新刊だけでなく古い本も探してこなければならない。かなりの手間がかかる仕事だが、売り上げが好調で利益率も高いことから、全国から「うちの本を扱ってほしい」と依頼が来ているという。

 文喫は立地や品揃え、用途に応じたサービスの戦略などで付加価値を見出した。この成功は出版業界復活の狼煙となるのだろうか。

取材・文/星野陽平

2019年11月4日掲載

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