田中圭、マツコ、浅田真央、木村文乃、デヴィ夫人……銘柄米CMがブームの理由

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田中圭の広告効果は?

「『つや姫』は高価格帯だが、それだけの価値がある」――こうした魅力を伝えるには、女優や歌手といった“本物の芸能人”より、“自分の言葉を持つ文化人”のほうが適任だと考えられた。そんな観点から候補者を探すうち、タレントだけでなく作家としても活躍する阿川佐和子が浮上した。実際、CMが始まると視聴者の評価も高く、今に至っている。

「最新作は、京都の高級料亭『菊乃井』の3代目主人である村田吉弘さん(67)と、音楽評論家のピーター・バラカンさん(68)に共演していただきました。村田さんは、お店で『つや姫』を使ってくださっていることもあり、『高級料亭も評価するお米』というメッセージを伝えてもらいました。ピーター・バラカンさんは『世界に通用する味』というイメージを担ってもらっています。インバウンド需要も意識した演出です」(同)

 18年には「つや姫」の“弟分”という位置づけで、「雪若丸」がデビューした。こちらのCMは田中圭(35)が出演したが、効果は予想以上だったという。山形新聞は19年1月28日に「昨秋デビューの県産米新品種『雪若丸』、予想上回る人気 売れ過ぎ、在庫切れに不安も」との記事を掲載した。

《2018年産の「雪若丸」は1万トンの生産を目指して栽培が進められた。全農山形での取扱量は6000~7000トンとなる見込みで、昨年12月までの販売量は県内外を含め2400トン。単純計算だが、このペースが続けば、次の新米が出回る秋まで持たせるのは難しいという》

 ちなみに「雪若丸」も「つや姫」も、CMは全国放送ではない。費用対効果などの関係から、山形県内以外では、首都圏、中京圏、関西圏という3大都市圏のみだ。北海道や四国、九州では放送されていないことになる。

「つや姫」と比較すると、「雪若丸」はコストパフォーマンスが高い商品とされている。「高級ブランド米ほどは高くないが、味はひけをとらない」ことを消費者に伝えたい。そして、メインターゲットの中には子育て真っ最中という主婦層が含まれている。

 つまり比較的、年齢の若い主婦にCMを届ける必要がある。そのため「誰に出演してもらうのがベストか」という調査を繰り返し、最終的に田中圭に絞り込んだ。田中は元女優のさくら(36)と結婚し、二女の父親でもあることも大きかった。広告効果を期待しての起用だったが、結果は予想を上回ったという。

「『雪若丸』を買ってほしい女性は、いわゆる『テレビ離れ』を指摘されている世代でもあります。SNSなど、インターネットでも『雪若丸』が盛り上がるということが重要な目標なのですが、テレビCMが話題になれば、それだけネットでも言及されるということを学びました」(同)

 県産米ブランド推進課の職員にとって、印象的なことがあった。ある日、県庁に「田中さんのCMはいつ放送されますか?」とファンの女性から問い合わせがあった。職員が「ネット上で動画が公開されています」とサイトへ案内しようとすると、女性は「テレビで見たいんです。そしてハードディスクに録画したいんです」と話したという。

 確かにファンにとっては、SNSもテレビも価値は同じだ。ネット上でCMの動画を見たからこそ、テレビも見たいと思う。「ネットとテレビは車の両輪のようなものです」と担当者は言う。

 こうして今日も、全国各地のブランド米を宣伝するCMが、特に大都市圏のテレビで放送されるわけだ。高級米と言えば、「魚沼産のコシヒカリ」しか選択肢がなかった時代は終わったと言えるだろう。

 今の日本では減反政策が撤廃され、米を自由に栽培することができる。その結果、産地間の競争も激化している。「ブランド米戦国時代」と呼ばれて久しいが、苛酷なシェア争いもCMの多さからも透けて見える。

(註:記事中で引用した新聞記事などは、デイリー新潮の表記法に合わせた)

週刊新潮WEB取材班

2019年10月31日掲載

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