「俺が死んだら、いい人見つけてな」ラグビー日本代表、夫を戦地に送り出した妻たち

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 5戦4勝1敗という結果が語る以上に死闘を繰り広げたラグビー日本代表。ラグビー解説者の村上晃一氏によると、

「前回W杯と比較し、今回は遥かに家族と会う時間がありました。前監督は閉じた空間に選手を追い込んで缶詰にする方針でしたが、ジェイミー・ジョセフ現監督は、家族と過ごしリフレッシュする時間を大事にしたんです。今回、合宿に240日間と多くの日数を費やしましたが、それは1年間をかけてのこと。前回の160日間の合宿は、約半年の間に詰め込まれています。今回の合宿中は、家族と過ごす休日を用意するなど、きちんと選手たちのケアを行なっていました」

 とはいえ、妻たちの中には、“銃後”の守りを固める思いで戦況を見守っていた者たちもいる。

「スクラムハーフの田中は合宿を伴う大会の前には必ず、“俺が死んだら、いい人見つけてな”と夫人に言ってきました。12年、スーパーラグビーのチームに入団する際、“レベルもパワーも違う。死ぬかもしれない。万が一そうなったら……”と言ったのが始まり。夫人も“命をかけてラグビーをするのは理解できるから、悔いなく戦ってきて”と言って送り出したそうですよ」(担当記者)

 他方、“戦場”から離れた夫の背中を押す妻もいる。日本代表最年長の38歳。ニュージーランド出身で10年に日本へ帰化したロックのトンプソンルークの場合……。

「トンプソンは15年W杯の後、“家族との時間を優先する”という奥さんとの約束を守るため、代表を引退しました。それでも去年6月、対イタリア戦を夫婦でテレビ観戦中、自然と彼のカラダが前のめりになっていったそうです」(同)

 その様子を見た妻は、

「“代表でやりたいの? やりたいなら、どうぞ”とトンプソンに言いました。彼は“引退したから、大丈夫”と否定したものの、夫人の“本当にやりたいなら、応援している”という言葉に血が騒ぎ、復帰を決断したのです」(同)

週刊新潮 2019年10月31日号掲載

特集「死闘『ラグビー日本代表』の代償と報酬」より

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