フードホールが都市部で増加中 背景に“食のパーソナライズ化”と“百貨店の苦境”

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ファミレスでは「メニューが少ない」!?

 流通アナリストの渡辺広明氏は、開業から一カ月が経った心斎橋フードホールを視察。年配客の多さが印象に残ったという。

「私が食べたトリュフボロネーゼは、税込1540円。一般的なフードコートのお店よりは高いですが、富裕層シニアには払えない金額ではありません。フードコート出店でおなじみの『リンガーハット』や『吉野家』と比べてみても、お寿司屋さんなど、年配の方がより好むお店が揃っている印象を受けました」

 フードホール盛況の背景には、老若男女、そして海外客も含めての「食のパーソナライズ化」の風潮があるという。

「ひと昔前に比べて、人がより自分の食べたい物を求める時代になってきているように感じます。個人店でもデリバリーできる『Uber Eats』が流行っているのも、そうした事情が影響しているものと思われます。食の多様化が当たり前になっている今の子供は、ファミリーレストランに連れていくと『メニューが少ない』と感じるようですよ。ハンバーグやラーメンはある。でも、たこ焼きがないじゃないか、寿司がないじゃないか、と。その点、大人から子供、食の嗜好が異なる海外からのお客様にも対応できるフードホール形式は強いですね」

 一般的なレストランと違い、“一品だけ”“ちょっとだけ食べたい”というニーズにも、フードホールならば対応できる。この辺りも、食にこだわりのあるシニアにもありがたい仕組みといえるだろうか。

 その特性上、多種多様の人が集まる地域とフードホールの相性はよく「今後は都市部を中心にフードホールは増えるでしょう」と、渡辺氏はみる。具体的には駅やバスのターミナルの近く、そして百貨店をはじめとする商業施設の中だ。先に紹介した大丸心斎橋店、GINZA SIXなどのほか、11月に改装オープンするそごう・西武の西武所沢S.C.(埼玉県所沢市)にも300席のフードホールが新たに設けられる予定となっている。

「百貨店内のフードホールは、デパ地下の延長線上のものと捉えられるでしょう。ひところ盛んだった化粧品売り場のインバウンド需要も落ち着き、また10月からの増税によって、百貨店が得意としてきたアパレルなどの高額品も売るのは厳しくなってきています。とくに若い人で、日常的にデパートでモノを買っているという人は今や少ないでしょう。その点、百貨店が活路を見出せるのが“食”の分野。上のフロアはガラガラでも、デパ地下が混んでいる光景は見たことがあるはず。色々なお惣菜を販売するデパ地下と同じイメージで、バラエティに富んだ食事を提供できるフードホールに各社力を入れはじめているのでは」

 多種多様な食を揃えるフードホールは、百貨店の“メシの種”でもあるということだ。

週刊新潮WEB取材班

2019年10月29日掲載

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