神戸小学校教員いじめ事件に見る、教育現場の悪循環

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“目に激辛スープ!”“屈辱シーンを撮影!”目を疑うようなニュースがメディアを賑わせた。おまけにこれが小学校の教員間のイジメだというのだから目も当てられない。もっともこの陰湿イジメ、実は氷山の一角で、そこから「知られざる世界」が仄見(ほのみ)えてくるのだ。

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 ある一定数の指導者には支配欲、もっと踏み込んで言えば洗脳欲が潜んでいるものだ。指示通りに従わせ、その快感が全身を駆け抜ける。支配は甘美な体験だと認識するようになる。

 それが歪み過ぎた形で発露したのが、昨年、世間の耳目を集め続けた「日大アメフト部の危険タックル事件」ではなかったか。精神科医の片田珠美氏によると、

「アメフト部の内田監督(当時)は、悪質なタックルを選手に強いて、“言うことを聞かなければ試合に出さない”と脅しつつ、“クォーターバックを潰せば今後も試合で使う”とアメもちらつかせていました。アメとムチを行使しつつ、監督は選手を支配していたと言えるでしょう」

 イマドキの小学生は、「廊下に立ってなさい」と言われれば「学習権の侵害‼」だと叫び、カラダが触れたり教員が竹刀を持っているだけで「体罰反対‼」と訴えるから、何もシナイ教員が出てくる。

 もっとも一般に中学生に比べて小学生は、腕力・体力に劣るわけで、刃向かってくる心配は相対的に少ない。

「小学校の先生たちって独特な空気がありますね。小学校というのは、学級担任をしながらほとんどの科目を1人の教師が教える制度になっている。年長者からすれば、若手が歩いているのはいわば“自分たちの通ってきた道”なので、口出しもしやすい。そのせいか、ルールというか定石のようなものができていて、それが本当に正しいか否かは別として、順応を求められる。言葉を選ばずに言えば独善的なんです」

 と、これはある中学教員からの評価である。

「中学生は半分大人のようなもので、たとえ教師が何かゴマかしてもすぐに見抜かれる。生徒との間にちゃんとした人間関係を築く必要がありますから、先に触れた教師同士の暗黙の『ルール』についても正しいか否かの健全な思考を働かせることが出来るでしょう。しかし、小学生相手にはそうはいきません。彼らは基本的には教師の言うことを聞きますし、強く言うことでだいたいの場合には従わせることができる」

 内田監督のようにアメとムチに頼る必要すらなく、その点でも指導はイージーと言えるわけだ。

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