聴覚障害者を装う外国人“旗売り”が急増中 30円の日の丸が500円のぼったくり

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一人で判断せず、断る勇気も必要

 大胡田弁護士は、こうした事案に遭遇した場合、まずは一人で判断しないことをすすめる。

「この件に限らずオレオレ詐欺などにも当てはまりますが、被害を受ける人はとっさのことで冷静な判断ができていないケースが多い。近くに家族、知人がいたら相談する、いなければ電話して聞いてみるなど、ワンクッション置くことが大切です」

 また怪しいと思ったら「いりません」ときっぱり断る。仮にしつこくされたら「警察に行きましょう」と毅然とした態度を示したほうがいいという。

「基本的に詐欺犯は『警察に行こう』と言われたら深追いしません。そんなリスクに晒されたくないので引き下がると思います。普通、障害者が『お金をください』と要求することはありませんし、逆に現金をあげることが障害者の尊厳を傷つける場合があることにも留意してほしい。私自身、全盲の障害を持っており、学生のときに電車の中で見知らぬ高齢女性に『かわいそうだね』と千円札を差し出された経験があります。『自分はお金を恵まれなければいけない立場なのか』とひどいショックを受けました」

 同時に大胡田弁護士は、「『障害者を見たら詐欺だと思え』という風潮にならないことも望みます」とも語る。

 聴覚障害者と称して500円の旗を売りつける。その行為は本当に「助けたい」という善意を持つ人、聴覚障害者の両者をも傷つけているのだ。

取材・文/安楽由紀子(清談社)

【識者プロフィール】大胡田誠弁護士
先天性緑内障により12歳で失明するが、慶應義塾大学大学院法務研究科へ進み、司法試験合格。全盲で司法試験に合格した日本で3人目の弁護士となる。複数の法律事務所を経て独立し、「おおごだ法律事務所」を設立。主に一般市民が直面する民事・家事事件を扱うが、自身の障害を活かし様々な困難や痛み、障害に苦しむ方々へ法的だけでなく精神的な面についても支援する。著書に『全盲の僕が弁護士になった理由~あきらめない心の鍛え方』(日経BP)があり、TBS系列にてドラマ化。おおごだ法律事務所Webサイト https://oogoda-law.jp/

2019年10月12日掲載

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