「耳」と「認知症」の意外な関係…加齢性難聴、気付かなければリスク増大!

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人は耳から衰える! 「認知症」「うつ病」リスク増大の「加齢性難聴」(1/2)

 加齢によって視力が落ち、足腰が弱れば、本人はもちろん周囲もすぐに気づくだろう。では、耳の場合はどうか。1千万人が悩まされ、認知症リスクを増大させることも判明した「加齢性難聴」。目に見えない災厄の正体と、その対処法を最新の知見から解き明かす。

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 たとえば、家庭内でこんな言葉を投げかけられた経験はないだろうか。

「宅配便を受け取ってほしいと言ったでしょ。どうして居留守ばかり使うの?」

「あらやだ、電子レンジのカレー、とっくに温まってるじゃないの。ほったらかしにしないでよ」

「なんでこんなにテレビの音がうるさいの! 夜中に近所迷惑でしょ」

「明日の予定を聞いただけなのに大声を出さないでよ! いつからそんなに怒りっぽくなったのかしら」

 おそらく家族はこう感じているはずだ。

 あの人は年を取って人が変わってしまった。物忘れはひどいし、注意力も散漫。人の言うことを全く聞いてくれない――。

 これを「老化」のひと言で片づけるのは簡単かもしれない。しかし、家族が口にする苦情には共通点があった。それは「耳の衰え」に由来するということだ。

「聞こえ」の問題は目に見えないため、家族が異変に気づきづらく、また、当の本人に自覚症状がないことも多い。結果、悪意などないにもかかわらず、知らず知らずのうちに周囲を困惑の渦に巻き込んでいる可能性がある。

 このように年齢を重ねることで起きる聴力の衰えが「加齢性難聴」。個人差こそあれ、誰もがその予備軍と言えるのだ。

 川越耳科学クリニックの坂田英明院長がその実状を解説するには、

「現在の日本で加齢性難聴に罹患しているのは1千万人以上と言われています。より詳しく説明すれば、75歳以上の日本人の約半数、さらに85歳以上のおよそ8割が加齢性難聴とのデータもある。今後、高齢化社会が進むにつれて、ますます罹患者が増えることは間違いありません」

 普段あまり聞かない話だが、1千万人を悩ませているとなれば、もはや「国民病」と呼んでも差し支えあるまい。

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