「山田孝之」の知られざる素顔 出演作品は必ず話題になる稀有な俳優

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作品選びのうまさ

 頭がいい――。俳優として成功している大きな理由だろう。役を理解するには知力がいる。ただし、高校には行かなかった。1998年、中学3年の時に出生地の鹿児島から東京に引っ越し、進学について考えようとして矢先、現在の所属事務所にスカウトされたからだ。翌1999年には俳優デビューを遂げている。よくあるコースを歩まないのは山田らしいだろう。

 2012年には一般人の女性と結婚。翌13年には第1子が生まれた。現在の趣味は「散歩」。やはり老成されている。

 それでいて仕事ぶりはエキサイティング。役にのめり込み、ときには共演者を驚かせる。2018年の映画「ハード・コア」で共演した佐藤健(30)も、「孝之さんは役に入り込む深さの次元が違う」と舌を巻いた。佐藤が舞台挨拶時に明かしたところによると、この映画で山田には失神するシーンがあったが、演技でなく本当に失神してしまった。それを傍らで聞いていた山田は、「早死にする人の典型ですよね」と涼しい顔だった。

「いい奴」タイプだからか、俳優の友人は多い。まず、小栗旬(37)。現在は富士通のスマホのCMで共演し、息の合ったところを見せているが、2人は約20年来の付き合いで、もともと親友だ。20代のころはお互いの部屋で、1対1で飲むほどの仲だった。小栗は常々、山田のアドリブの面白さを賞賛している。アドリブがうまいということは、やはり頭がいいのである。

 小栗は自分を中心とする仲良しグループ、いわゆる「小栗会」を率いているが、もちろん山田もメンバーの1人。ほかに藤原竜也(37)や綾野剛(37)らがいて、酒を飲んだり、カラオケに興じたりしている。

 そのうち綾野とは「闇金ウシジマくん」や2015年の映画「新宿スワン」などで共演しており、大の仲良し。綾野は「孝之と入籍できたら……」と冗談めかして口にしたことがある くらい山田に惚れ込んでいる。

 肝心の仕事のほうはというと、もう何年も話題作に事欠かない。2013年、リリー・フランキー(55)とピエール瀧(52)の俳優としての評価を決定付けた映画「凶悪」で主人公の雑誌記者を演じたと思えば、コミカルな冒険活劇「勇者ヨシヒコシリーズ」(テレビ東京)に2011年から6年間にわたって主演し、視聴者を爆笑の渦に包んだ。

「作品選びが抜群にうまい。たぶん俳優の中でナンバーワンです。最近は民放のプライムタイムに主演しませんが、制約が多く、平均点狙いの作品が多いので、単に魅力を感じないのでしょう。所属事務所は山田を信用し、仕事選びは基本的に本人に任せていると聞きます。そのほうが、ミスマッチがなくなり、モチベーションも高まるので、うまくいくのでしょう」(民放プロデューサー)

 さて、「全裸監督」は8月8日から190の国と地域(日本語を含む、吹き替え言語12、字幕言語28)で配信されて大ヒット中。早くもシーズン2の制作が決定した。「闇金ウシジマくん」「勇者ヨシヒコシリーズ」も深夜ドラマだったが、山田はますますプライムタイムのドラマから離れていくのかもしれない。

「全裸監督」成功の最大の功労者は、間違いなく山田だ。難しい役なのである。作品内の村西監督は、どんどん変貌していく。うだつの上がらない英語教材セールスマンから、トップセールスマンに登り詰め、さらにビニ本の制作・販売者を経て、AV監督に。それとともに口調や顔つきが変わっていく。並大抵の演技力ではこなせない。

 また、多くの人を引き付けるのは、優れた群像劇になっているからだろう。社会からハミ出た男女が、体を張ってAV界で登り詰めていく姿は、ときに見る側の胸を熱くする。

 今、山田ほど映画、ドラマの出演依頼が多い俳優はいない。一緒に仕事をしたがっている監督は枚挙に暇がない。「全裸監督」成功によって、その数はますます増えるだろう。

 またまだ山田の快進撃は続きそうだ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
ライター、エディター。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年9月21日掲載

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