丸佳浩の“凄さ”とは 広島時代の盟友が明かす「巨人」でも成功した理由

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丸の全盛期は

 丸は13年から6年連続でゴールデングラブ賞を獲得するなど、外野守備にも定評がある。現役時代にはホームラン性の打球をフェンスによじ登ってキャッチするなど、ダイナミックなプレーでファンを沸かせた天谷氏は、丸の守備について、入団当時はさほど上手くはない選手という印象だったと言う。

「高校時代はピッチャーが本職の選手なので、肩はよかったですが、正直に言えば『下手くそやな』と思っていました。それが当時、コーチだった緒方孝市現監督のノックで、一気に伸びた印象があります。当時は私と一緒に、2人でいつも特守を受けていました。フライの追い方やボールへの入り方など、ある時から急に上手くなった印象です。守備は練習すればするほど上手くなると言いますが、丸を見て、本当にそれを実感しました。毎日のように緒方さんのノックを受け続ける、量をこなす体力も丸にはありましたね」

 同じチームに所属し、同じコーチの指導を受けた天谷氏だが「それであれだけ差が開いたのが、丸の凄いところ」と素直に脱帽する。丸の成功の要因には、性格面も大きいと天谷氏は言う。

「いろいろなコーチがいて、それぞれの指導法がある中で、丸はこれだと思ったことは自分の中で噛み砕いて、それをやり続けてしっかり自分のものにする。逆に自分に合わないと思ったことは全くやらない。すぐに結果が出なくても、先を見据えて取り組み続けて、それがダメなら自分で責任を取るという潔さもあります。とにかく、自分が信じたことに対して愚直にやり続ける能力。そこが丸の一番凄いところだと思います」

 移籍した巨人では、丸のキャンプでの練習量に若手選手が刺激を受けた。丸も壁を作ることなく、積極的に交流を行うなど、文字通りチームの「お手本」になった。

「カープでも若い選手によく声をかけていたし、時には先輩をイジるようなこともしていた。とにかくチームがいい雰囲気になるようなことをずっとやっていました。丸は故障が少ない選手と言われますが、ケガがあったとしても、それを見せない。チームの中でも、知っているのはほんの少数で、実はどこかが痛かった、と後から聞いたことも何度かありました。自分の弱いところを、特に後輩には絶対に見せることはない。そんな姿勢に、鈴木誠也などは本当に丸を頼りにしていたようです」

 若手に限らず、今季は本塁打王争いをリードするなど、長距離砲として覚醒した感もある坂本勇人も、少なからず丸の影響を受けたとされる。

「今季は坂本が2番に入ることが多いですが、それも後を打つ丸がいるからこそ、できることだと思います。さらにその後の4番に岡本和真、5番にはゲレーロや阿部慎之助などがいることで、打線としていい形ができていますね」

 巨人が5年ぶりの優勝となれば、丸はリーグでただ一人、4連覇を経験する選手となる。その原動力と呼ぶにふさわしい存在であることは間違いないが、天谷氏は最後に、冗談交じりに意外な見解を示した。

「打者に有利と言われる東京ドームが本拠地なら、昨年までの成績を考えれば打率3割3分、ホームランは50本近く打ってもおかしくないと思っていましたけどね。もしかしたら、そのあたりが移籍のプレッシャーなのかもしれませんが、それでも十分な成績ですよね」

 今年30歳になったばかりの丸佳浩が全盛期を迎えるのは、まだ先のことなのかもしれない。

週刊新潮WEB取材班

2019年9月18日掲載

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