東京五輪のせいで「花火大会」「夏フェス」「プール」等中止の危機

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 夜空のみならず、水中にも彩る花火。世界遺産であり、日本三景の一つである広島県・宮島で8月24日に開催された「宮島水中花火大会」は、水中花火150発を含む約5千発が打ち上げられ、毎年約30万人が訪れている。だが、今年で47回を数えたこの大イベントが、来年は開催を中止するという。

 主催者の一つ宮島観光協会に中止の理由を聞くと、

「例年、地元警察などを除き、200人態勢で警備にあたっていますが、来年は人員確保が困難だと判明し、中止を決断しました。東京五輪・パラリンピック開催による警備員不足が主な理由です」

 宮島水中花火大会では警備員のみならず、毎年現場整理にあたるアルバイトの確保も難航しているという。

「宮島の中止は対岸の火事ではありません」

 困惑気味に語るのは、ライブなどを手掛けているプロモーターだ。

「ライブやコンサートでは、地元警察から警備員を配置するよう指導されます。来年一番心配しているのは夏のフェスティバル、通称“夏フェス”。毎年、野外での開催には多数の警備員が必要です。最近、警備会社から“来夏は、五輪期間中は難しい”と連絡を受けたので、他の警備会社にも声をかけたが……」

 また、大型プールを運営するレジャー会社の幹部も頭を抱えながら、

「3年前に起きた東京サマーランドの傷害事件の影響で、警察当局から警備強化を言い渡されました。必要な数の要員を確保できなかったら、開園できない恐れさえあります」

 警察庁生活安全局生活安全企画課がまとめた「警備業の概況」によれば、平成30年12月末時点で届け出のある警備会社は全国で9714社、警備員の数は55万4517人に上る。全国警備業協会の広報担当者の解説では、

「平成29年から30年の1年間で警備会社は166社、警備員は2112人増加しています。とはいえ、全業種平均有効求人倍率が1・59倍なのに対して、警備業界は8・15倍と慢性的な人手不足。また、50歳以上が全体の63・2%を占め、30歳未満はわずか9・9%で高齢化も問題になっています」

 さらに、新たなニーズの発生が警備員不足を加速させているという。

「新幹線の車内や鉄道のホーム、ホームセキュリティーなど、数年前までなかった新規需要が発生しています。つまり、警備員の数が増えても、供給が需要にまったく追いついていないのが現状なのです」(同)

 ある警備会社の幹部は、給与面の問題を指摘する。

「警備員の平均年収は51・9歳で約309万円で、サラリーマンの平均年収より100万円以上少ない。それに対して、自治体主催のイベントで支出される警備費用は10年前からほとんど変わっていないケースも少なくありません。これでは警備員を確保するのは難しいでしょう」

 かつて、水と安全はタダと言われていたが、根本から考え直す必要がありそうだ。

週刊新潮 2019年9月19日号掲載

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