プロ棋士編入試験の受験資格を得た「ユーチューバー」苦難の道程

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 実に5年ぶりだという。折田翔吾(おりたしょうご)さん(29)が8月30日、プロ公式戦で勝利を収めて日本将棋連盟によるプロ編入試験の受験資格を得た。プロ棋士に挑む彼の職業は、ネットに動画を投稿するユーチューバーだ。

 大阪府出身の折田さんは、単なる将棋好きのアマチュア棋士ではない。観戦記者によれば、

「折田さんは、2004年にプロ棋士養成機関である奨励会に入会しました。プロ棋士になる一歩手前の三段リーグまで駒を進めたものの、16年に年齢制限の26歳で退会を余儀なくされています」

 プロ棋士への道を断念した後、折田さんはアマ棋士に将棋を教える講師として活動する一方、自分の指した将棋の実況動画を投稿するユーチューバーになった。現役のプロ棋士の解説では、

「アマ棋士を指導しても報酬は1回1万円も貰えず、毎日仕事があるわけではない。ユーチューバーの仕事も、経済的には決して楽ではないはずです。彼のチャンネルの登録者数は約3・3万人いますが、広告もそれほど多くありませんからね」

 そんな逆境を跳ね返した折田さんはプロ公式戦に出場して白星を重ね、直近のプロ棋士との戦績は10勝2敗。晴れて、受験資格を得たのだった。

「受験資格を得たことは、30日の対局後に本人から電話で報告がありました」

 こう声を弾ませるのは、折田さんの師匠である森安正幸七段だ。

「奨励会時代よりも強くなっているんじゃないかな。三段リーグにいた時は年齢制限のプレッシャーもあって、十分に力を発揮できなかったかもしれません。アマ棋士になり、自由に指せたことが結果に繋がったのでしょう。是非、合格して欲しいですね」

 試験では四段のプロ棋士5人に3勝すると、一度は断念した夢が実現する。

週刊新潮 2019年9月12日号掲載

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