自衛隊員は基地で使うトイレットペーパーを自腹で買う 理不尽すぎる自衛隊の環境

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“無限労働地獄”

 自衛隊の中で最も過酷な職場は、海上自衛隊の潜水艦乗務だという。

「現在、海上自衛隊に潜水艦は22隻ありますが、1隻の定員は70人です。ところが、実際に乗員しているのは、定員の6割も満たしていません。何故かというと、労働が過酷すぎてどんどん辞めていくからです。海自のなかで潜水艦乗務員になるのはほんの数パーセントだけ。外が見えない閉鎖空間でもトラブルを起こさない冷静沈着な性格と、記憶力と身体能力が求められるので、彼らはかなりのエリートです。それでも、埠頭に接舷している時でさえ、5日に1度は当直がまわってきて、24時間勤務を強いられます。当直が明けても引き続き通常勤務になるので、計30時間勤務ということになる。さらに、長い航海中は土日の休みはありません。代休は溜まっていくのに、乗員が足りないのでそれも消化できない。休みなく勤務は延々と続くのです。これでは辞める者が出るのも当然です。昔は、潜水艦が補修のためドックに入ったら、長期休暇が取れたのですが、今は他の艦に応援に行くので休めないのです」

 安全保障上欠かせない陸上自衛隊の射撃訓練は、予算不足で弾丸が思うように使えないという。

「19年度の当初予算案の防衛費は、過去最大の5兆2574億円に上りました。それでも、予算が足りないのが現状です。日本の防衛費はGDPの1%ですが、トランプ大統領が言っているように2%くらいないと、まともな防衛はできません。たとえば、射撃訓練も弾薬が大量に買えないので、制限されています。数百人いる特殊部隊は無制限に撃てますが、普通の隊員は、1、2カ月に1回20~40発程度の射撃訓練しかできません。クレー射撃の選手の方が射撃訓練をしていると思います」

 潜水艦の魚雷発射訓練は特に費用がかかる。

「私が主催する『自衛官守る会』には元自衛官の方もいらっしゃるのですが、その人の話によると、魚雷の演習では、1回の訓練で的に向けて魚雷を1発撃ちます。的に命中したか、右にずれたか左にずれたかは記録されますが、演習はそれで終わりです。的に当たらないと、魚雷を撃ち直すのが普通ですが、予算の都合で1発だけなんですよ。これで演習と言えるのでしょうか」

 有事になっても、実際、自衛隊が戦えるのはほんの短期間だけという。

「自衛隊の武器の保有量は機密事項となっていますが、有事の際は、自衛隊が戦えるのはせいぜい2週間くらいと言われています。毎年4月に予算がついて、5月に弾丸などを購入。その後演習を続けると、翌年3月には弾薬や燃料がほぼ尽きてしまうそうです。だから中国の人民解放軍は、日本とやるときは3月だ、と言っているとか。それだけ足元を見られているということでしょう。これでは、もし有事になったら、自衛官は圧倒的に不利と言わざるをえません。自衛官は、災害救助で亡くなった場合は、民間の生命保険金がでますが、戦争時は免責となり、保険金も下りません。国のために戦って亡くなったら、遺族には何も残せない。自衛官が後顧の憂いなく存分に戦えるように、戦争時の自衛官の保障を国会で議論すべきでは」

 自衛官の定員は約24万7000人で、現状は約22万4000人(2017年)。定年は53歳で、定年、中途退職者が年間2000人ほど。採用枠は、毎年2500人だが、ここ数年は1700人ほどしか採用されていないという。自衛官の待遇が改善されない限り、永遠に人員不足は解消されない。

週刊新潮WEB取材班

2019年9月11日掲載

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