「インディゴの気分」「百合だのかんだの」FOD発のドラマに救われた夏

芸能週刊新潮 2019年9月12日号掲載

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 人の気を狂わせる湿度の高い暑さ、民放ゴールデン枠ドラマ軒並みのつまらなさ、稀にみる仕事の立て込み具合と私生活の懸案事項が重なり、この夏は白目剥きっぱなしだった。

 救いは有料配信系と深夜枠にあり。なぜか私はFOD(フジテレビオンデマンド)発のドラマに妙にくすぐられる傾向がある。「ラブラブエイリアン」「ぼくは麻理のなか」「彼氏をローンで買いました」「ラブホの上野さん」「クズの本懐」「パパ活」「ポルノグラファー」と好きだった過去作を並べてわかったのは、セリフや設定がゴールデン向きではないこと。ゴールデン向きではないってなんだよ、と思うが、要するに太陽光が似合わない系。日曜劇場や朝ドラと真逆で、邪道系ってことだ。単純に言えば「野島伸司&三木康一郎の脚本が好き」ってことだ。しかもFODオリジナル作品は、待てば、そのうち地上波で深夜にこっそり流してくれるからな。

 で、待ちに待ったのが「ポルノグラファー」のスピンオフ「インディゴの気分」だ。

 シンプルに言えば、BL。男同士の性愛をねっちりたっぷりじっとりこれでもか、と見せる。青みがかった映像で、短髪マッチョの吉田宗洋が喘ぎ、美形イケメン竹財(たけざい)輝之助が身悶えるのだ。

 大学の同級生だったふたりが恩師の葬儀を機に再会。竹財は学生時代に作家デビューするも、気位の高さが災いし、編集者は離れていって、金も仕事もない状態。吉田は官能小説の編集者。実は作家志望だったが、竹財の処女作を読んで、自分の才能のなさに絶望した経験がある。そんなふたりが、官能作家の大御所(大石吾朗)の悪戯心に付き合わされて、肉体的にも懇(ねんご)ろになり……という物語だ。

 正直に書く。これは抜ける、というかイケる。淑女の皆様に薦めたい。たとえるなら「おっさんずラブ」は「ざんねんないきもの事典」で、こっちは「ナショナルジオグラフィック」だ。

 もう1本。「百合だのかんだの」は、女性同士の友情以上恋愛未満、好意と悪意の交差点、みたいな物語。ストーカー被害に遭っている馬場ふみかに、自分が住むマンションの隣の部屋を紹介した小島藤子。実は小学校の時の同級生とわかり、距離を縮めていくふたり。元ジュニアアイドル(今はジュニアアイドルと呼ぶことを初めて知った)の小島は、男の欲望を蔑(さげす)み、ある種の諦観と達観をもつ。自称「性がブッ壊れている女」だ。おぼこい馬場は単純で素直。徐々に小島の手によって手なずけられていく。といってもあくまで友達。至近距離の友情を描く。

 こういう関係もアリだな、むしろ平和だなと思いながら観ている。平和を乱すのは石黒賢演じる大学教授で、学生の馬場に対して異様な悪意を向けてくる。不穏だ。

 太陽光が似合わない作品には、必ず語彙の豊富な語り部がいる。竹財であり、小島であり。品があろうとなかろうと、日常会話にしては明晰すぎであろうとなかろうと、その言霊(ことだま)の虜になってしまう。叙事的ドラマよりも抒情的ドラマが好みだと改めて噛みしめた夏。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。