「記録的」「観測史上最強」の連発で、天気予報がオオカミ少年になる日

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新幹線の運休まで…

 ところでその「空振り」に関連し、8月15日には山陽新幹線が台風10号の接近を見越して「計画運休」したのだが、これに疑義を呈するのは、さる交通ジャーナリストである。

「輸送業各社は『タイムライン』といってあらかじめどう動いてどうアナウンスするか、スケジュールを決めています。予報の精度が上がったことで計画運休もしばしばみられるようになりましたが、徐行や間引き運転ならまだしも、大動脈である新幹線を始発から一斉に止めるというのは、行き過ぎの感が否めません」

 あたかも「空振りはしても見逃しはするな」が伝播しているかのようである。

「“無事故に越したことはない”というのは、いわば易きに流れる発想で、乗客の立場を考えれば、本来は鉄道会社がタイムラインを柔軟に運用し、状況に合わせて徐行運転、一時運休など臨機応変に対応すべきなのです」(同)

 ちなみに営業運転中の新幹線の脱線事故は2004年10月の新潟県中越地震の際、上越新幹線の1件のみ。転覆事故は、開業以来55年の歴史で一度もない。

 放送プロデューサーのデーブ・スペクター氏が言う。

「天気予報とは本来、ローカルで局地的に報じることに意義があります。そもそも今の時代、いつどこで雨が降るかというのはスマホで検索すればピンポイントで分かる。それなのにキー局のワイドショーが全国一律に長々と流すのは合理的ではありません。近年、台風は増加傾向にあると言われているけれど、明日、明後日に上陸となったら本格的に取り上げるとか、ショーとして報じる上でのルールを考えるべきかもしれません。天気ネタは作りやすいからこそ、安易にあおるべきではないのです。いや、天気だけについキショウが荒くなってしまって……」

 台風の季節、受け止める側の判断力もまた“占われている”というのだ。

週刊新潮 2019年9月5日号掲載

特集「あおりでショービジネス化! 『天気予報』がオオカミ少年になる日」より

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