京急脱線事故、わずか2日後に復旧の離れ業、鉄道ファンの間で有名な“社風”とは?

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「#がんばれ京急」がトレンド入り

 最後は読売新聞オンライン。今年3月、「トラブルに強い! 同業者も驚くあの私鉄のスゴ技」の記事を掲載した。京急を《トラブル時も不通区間を最小に抑え、復旧までの時間が短いと評判》だと伝えた。

 その秘密を解き明かすという趣旨の記事には、同社の運転課長が登場。信号やダイヤ作成などの業務で、人間の手作業を意図的に残したことがトラブルに強い理由と説明している。

 手作業は時間がかかる。《時刻表通りに列車が運行している限りは、コンピューターは優秀でしょう》としながらも、トラブル時には人間の臨機応変な対応こそが、“傷口”をできるだけ小さくすることができると説明している。

「『トラブル時こそ、お客さま第一の姿勢を取る』という京急の社風は、広報対応にも現れます。鉄道会社に限らず、大規模な事故が起きて損害を被った企業は、『復旧は未定』と説明することが少なくありません。それが一番無難なのでしょうが、利用客への情報提供という観点からすると、不親切と言わざるを得ません」(同・鉄道担当記者)

 京急の場合、5日に踏切事故が起きると、その日の夜に開かれた会見で「6日夕のラッシュ時間帯までの運転再開を目指す」と発表した。

「残念ながら、それは現実のものとはなりませんでした。その後、公式サイトで『7日始発までの運転再開』と改められました。勇み足という声もあるでしょうが、京急が『1日でも1時間でも早く復旧させる』という強い意思を持っていることの証左でもあります」(同)

 ツイッターでは「#がんばれ京急」のハッシュタグがトレンド入りした。多くの日本人が、夜を徹して復旧にあたる京急を応援したことが分かる。

「京急は横浜から品川まで、JRと並行して走っています。三浦半島を通る沿線では圧倒的なシェアを誇りますから、せっかくの乗客をライバルであるJRが通る横浜駅で乗り換えられることは避けたい。そのため、少々のことでも運休にせず、何が何でも走り続けるという社風が誕生したのだと思います」(同)

 利用客にとっては理想的な私鉄というわけだが、その一方で、時事通信は9月6日、「ブレーキ操作、適切か確認へ=京急事故の脱線列車、踏切前止まれず-運送会社を捜索」の記事を配信した。

《脱線した事故で、男性運転士(28)が現場手前に設置されている信号に従って直ちに非常ブレーキをかけていれば、列車が踏切前で停止できた可能性があることが6日、京浜急行電鉄への取材で分かった》

 やがて捜査機関もマスコミも、京急にも問題がなかったか、捜査や取材を加速させることになる。

週刊新潮WEB取材班

2019年9月6日掲載

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