森田さんも憂える、天気予報「ショービジネス化」の弊害

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求められる視聴者受け

 で、そんな工夫も後押しし、低予算で視聴率も見込める天気予報は番組内で大きなウエイトを占めるようになり、「キラーコンテンツ化」とともに「ショー化」が進んでいるというのだ。

「視聴者にわかりやすい予報を心掛けるのは大いに結構だと思います。ただ、テレビの特性上、仕方ないとはいえ、予報士に断定調で言わせるという昨今の番組作りは、一般的には好ましいとは言えません。何ごとも“グレー”の部分があるのに、メディアはどうしても視聴者受けする明快なコメントを望みます。仮に6対4で雨が降るという状況でも、6割を採って『雨が降ります』と言わざるを得ない。でも本当は『6割の確率で降ります』と説明するべきでしょう」

 実際に過去、以下の惨事も起きていた。森田氏が気象協会に入る前年、68年8月のことだった。

「岐阜県の飛驒川で大規模な事故が発生したのです。集中豪雨によって土砂災害が発生し、巻き込まれた2台の観光バスが増水した飛驒川に転落。104人の方が亡くなるという国内で最悪のバス事故となりました。実はこの事故が起きる前、観光会社の人が気象協会に天気を問い合わせていたのですが、その時点では雨が降るかどうか、微妙な気配でした。当時の人に聞いた話ですが、協会はどちらかの見通しを示さねばと考え『雨は弱まる方向』と、楽観的な回答をし、結果的に大事故が起きる一因になったといいます」

 こうした反省に立ち、

「私は上司から『わからないことを絶対に“わかる”と答えるな』と、厳しく言われてきたし、後輩にもそう指導してきた。ですから、いかに精度が上がったとはいえ、予報に関して白黒つけるという風潮は、デメリットも多いと思います」

(2)へつづく

週刊新潮 2019年9月5日号掲載

特集「あおりでショービジネス化! 『天気予報』がオオカミ少年になる日」より

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