森ビル「330メートル超高層」計画への地元一等地住民の反応

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 東京タワーや高層ビルが立ち並ぶ東京の麻布台近辺は、ハイソな街のように見えて、路地を入ると戦前で時間が止まったような一画がある。いや、以前はあった、という言い方が正しい。

「そこには“我善坊谷(がぜんぼうだに)”と言われる窪地があって2代将軍・徳川秀忠の正室が荼毘に付された場所なんです。古いアパートとか商店があったんだけど、森ビルが社員寮を建てたのが20年以上前。以来、各家に土地を売って欲しいって声をかけて回っていました。でも、ビルが建つことは全く教えてくれません。まさか、こんな大きなものが建つとは……」(麻布台に住む住民)

 大手デベロッパーの森ビルが、「虎ノ門・麻布台プロジェクト」を発表したのは8月22日のこと。敷地約6万4千平方メートルに建つのは三つのタワーだ。メイン棟は330メートルと日本一の高さになる。

「プロジェクトは30年前から手掛けてきたものです。世界の一流人材に集まってもらうため、インターナショナルスクールも併設します。オフィスのほか約1400戸の住宅も作る予定で、一番大きい部屋は5LDKの千平方メートルになる予定です」(森ビルの広報担当者)

 賃貸・分譲の価格はまだ決まっていないが、分譲になった場合、こちらも“日本一”になりそうだ。

「予定地の隣に建つ『アークヒルズ 仙石山レジデンス』は178平方メートルで4億5千万円。千平方メートルはその約5倍ですから、単純計算で25億円です。実際にはそれ以上になるでしょう」(地元の不動産業者)

 それにしても、よくこんな土地が残っていたものだ。地権者は約300人。多くは“権利者”として住宅棟に家を持てるが、移転を余儀なくされる店もある。そのひとつ、ベラルーシ料理店のマダムが言うには、

「引っ越しも含めてすべて森ビルの人が助けてくれました。いま入っているビルも森ビルの物件です」

 現地を訪ねてみると、我善坊谷は整地の最中。日本一のビルが建つのは4年後のことである。

週刊新潮 2019年9月5日号掲載

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