阪神が「鳥谷敬」に衝撃の引退勧告…「巨人」と「西武」が獲得すべきこれだけの根拠

野球2019年9月4日掲載

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「虎のレジェンド」が阪神を去る――。

 8月31日、阪神ファンに激震が走った。鳥谷敬が報道陣に対して球団から引退勧告を受けていたことを明らかにしたのだ。このまま引退するか、他球団で現役を続行するかについては態度を保留したが、阪神のユニフォームを着て鳥谷がプレーをするのは今シーズンで見納めになる。

 鳥谷は、ドラフト最大の目玉として、2003年の自由獲得枠で阪神に入団。2年目にはショートのレギュラーに定着し、史上1位となる667試合フルイニング出場、歴代2位の全試合出場(1939試合)など数々の記録を打ち立てた。一昨年には2000本安打も達成するなど、まさに阪神が誇る「現役最大」のスター選手である。そのスターに対する球団の扱いに対して、多くのファンやプロ野球OBからは非難の声があがっているが、同時に他球団からは今オフの獲得候補として調査対象となることも間違いない。鳥谷が現役を続けるのであれば、どの球団がマッチするのか。現有戦力などから探ってみた。

 セ・リーグで、まず候補となりそうなのが巨人だ。鳥谷の本職であるショートには、不動のレギュラーである坂本勇人がいるが、来年32歳となる坂本より年齢が上の内野手は今季加入した中島宏之だけだ(阿部慎之助は捕手登録)。鳥谷は、中島より1学年上だが、内野であれば、どこでも守ることができ、脚力も大きく上回っている。

 今シーズンの中島の働きぶりと比較して、起用される幅の広さがある点を考えると、鳥谷の方が戦力になる可能性は高いだろう。また、球団の選手の顔ぶれを見ても、大竹寛や山口俊、炭谷銀仁朗、陽岱鋼、丸佳浩など他球団で実績を残した選手が多い。もちろん、これ以上ベテランを獲得せずに若手を起用した方が良いという考え方もあるが、鳥谷がプレーしやすい環境という意味では、意外と巨人がフィットするのではないだろうか。また、最大のライバル球団で“古巣阪神”を見返すというモチベーションにもなるはずだ。巨人・大塚淳弘球団副代表は、鳥谷について「素晴らしい選手ですが(獲得調査は)考えてない」と静観する姿勢を示すが、ここは獲得に乗り出すべきだろう。

 一方のパ・リーグでは西武を推したい。ベテランの野手ということでは生え抜きの中村剛也と栗山巧がいるが、プレースタイルは大きく異なっている。ショートは源田壮亮という盤石なレギュラーはいるが、鳥谷のように、二遊間やサードを守れるベテラン選手は現在の選手構成では存在しない。セカンドの外崎修汰、サードの中村のバックアップとなる選手は間違いなく手薄である。くわえて、リードオフマンの秋山翔吾が今オフにFAでメジャーに移籍する事態に発展すれば、左打ちの野手の層はより薄くなる。鳥谷自身は埼玉の聖望学園出身ということもあり、かつてはFAで西武移籍という話もあったほど。今シーズンは少し精彩を欠いているが、阪神からトレードで移籍して存在感を示している榎田大樹がいることも鳥谷にはプラスとなるだろう。

 そのほか、一部報道で獲得に動き出すと噂されている球団はロッテと中日だ。確かに、ロッテは今シーズンを最後に福浦和也が引退するため、内野手のベテランはそれほど多くはない。しかし、ファースト以外の内野を守れる中堅選手は“飽和状態”であることを考えると、あまり得策とはいえない。ただ、鈴木大地がFAで他球団へ移籍という事態になった場合は、獲得を検討する価値はあるかもしれない。

 中日は内野のバックアップという意味では確かに選手層は手薄だが、チームは若返りの真っただ中。ようやく実績のあるベテランの大半が引退したところに鳥谷が入れば、若手の抜擢が遅れてしまう可能性が高い。昨年は松坂大輔の獲得により興行面では大きなプラスとはなったが、将来のチーム作りを優先させるべきだ。

 改めて、今シーズンの鳥谷の成績を見てみると、56試合に出場して77打数16安打、本塁打と打点はともに0と寂しい数字となっている(成績は9月2日時点)。だが、攻守とも技術的には高いレベルを依然として誇り、脚力も著しく衰えたようには感じない。不振の原因は、どちらかというと“処遇”に対する精神的な問題の方が大きかったようにも見える。

 かつては同じく2000本安打を放ちながら「引退勧告」を受けた石井琢朗が広島に移籍して、2年連続で年俸アップを勝ち取ったという例もある。「阪神の鳥谷」として現役生活を終えた方が良いのではという意見があるが、もう一花咲かせてほしいと願うファンも多いはずだ。球史に残る名ショートの鮮やかな「復活劇」に期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集