深海魚の胃袋からプラスチックごみ……「海の手配師」が語る、海洋汚染の現実

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魚の獲れ高は減少、海洋ごみの問題も

――ハリウッドのサメ映画や漫画『マグメル深海水族館』のような海底研究施設や深海水族館は実現可能なんでしょうか?

石垣:やろうと思えばできるんじゃないですかね。実現したとしても驚きませんよ。

 ただ、海の環境っていう点で見れば、魚の獲れ高は減少してきてるし、プラスチックごみの問題もあります。水深200~600メートルに棲むアオメエソ数千匹をサンプルに胃袋を調べたらマイクロプラスチックが出てきました。海洋ごみの問題は深海にも及んでるんですね。ぼくらの仕事っていうのは、こういう現状を知ってもらうきっかけ作りです。

 環境問題が……とどストレートに言ってもなかなか響かないでしょう? たとえばアニメーションを作ったり、実際の深海魚の生体を展示したりして、それで来てくれたひとにまず興味を持ってもらおうと。やっぱりまずはそこに生きてる生き物が可愛いとか面白いとか、なんでもいいから興味を持ってもらわないことには始まらないですから。

――漫画の監修についても、そういった活動の一環ということでしょうか?

石垣:そうです。マグメル深海水族館って、未来の理想の水族館なんです。場所が東京湾ってところもポイントで、羽田空港から20分くらいで来られる大都会の真ん前の海に作られてるっていう設定。日本の海とマグメルを目当てに、世界中からひとが来てくれる。

 マッコウクジラやダイオウイカを呼び寄せる方法や、チョウチンアンコウの餌やりなんかは、すでにベースとしての技術はあるんですよ。漫画では、現在の2歩3歩先の技術を展示してるイメージですね。

 作品内では深海魚の生態についてはもちろん、いろんな人間関係も描かれてますよね。環境問題について、海外だと漁師やダイバーや行政が一丸となって取り組むんですけど、日本だと全然協同できてないんです。

 でも、みんな海が好きで関心があってその仕事をしてるんだから、絶対協力しあったほうがいいと思うんですよ。どんなにテクニカルな部分が発達したって、ひとが協力しあわなかったら、うまくいかないわけです。もちろん、想いだけでもだめだけど。20年くらい経って、技術が今よりもっと進んで人間同士の関係がよくなっていれば、マグメルは実現してるかもしれない。

――20年後……まだ私たちも生きてますね……。

石垣:20年後にできてたら面白いんじゃないかな。自分が生きてる間に実現したら、ねえ。行ってみたいですよね。

石垣幸二(いしがき・こうじ)
1967年、静岡県下田市生まれ。有限会社ブルーコーナー代表。世界30カ国、210館の水族館に希少な海洋生物を納入し、「海の手配師」と呼ばれる。「クレイジージャーニー」(TBS系)など多くのテレビ番組に出演。

取材・文/小川睦月

2019年8月30日掲載

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