深海魚の胃袋からプラスチックごみ……「海の手配師」が語る、海洋汚染の現実

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「宇宙飛行士の毛利衛さんと会った時に言われたんですよ。深海はいいね、だって生き物がいるもんって」

 深海魚ブームの火付け役である石垣幸二さんは軽やかに笑ってそう言った。

 深海世界や深海魚は今も昔も私たちを魅了してやまない。昨今では映画やドキュメンタリーにとどまらず、近未来の水族館を描いた『マグメル深海水族館』など漫画でもその魅力を知ることができる。インターネットで世界のどこでも誰かとつながることができて、宇宙から地球を見下ろすことさえ可能な現代に、いまだ多くの謎を残す深海の魅力に挑む「海の手配師」に話を聞いた。
 
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水族館から依頼を受け生物を納入する

――海の手配師ということですが、どんなお仕事なんでしょう?

石垣:仕事の内容は、水族館から依頼を受けて生物を納入することです。

 生物の種類、オスメス、サイズといった細かい依頼を受けたら、だいたいの生息域を調べて、現地の漁師や市場関係者、大学教授なんかにコンタクトを取って詳しい情報を集めます。この辺に生息してるだろうという段になったら、直接獲りに行くんですね。

 捕獲、保管、輸送、また保管、それからようやく水族館へ。これが主な仕事の流れです。

――生き物を扱うお仕事ですから、大変なことも多いと思いますが……。

石垣:一番大変なのは輸送ですね。捕まえるより水槽で一時的に飼うより、運ぶのが何より大変。地味ですけど(笑)。

 もう何年も前にオーストラリアのクリスマス島にいるアカガニを依頼された時なんかは、輸出の許可だけで3年以上かかりました。

 ただでさえ誰もやったことのないアカガニの空輸だったのに、パースを経由しようとしたらなぜか保税対象にされて24時間預かり措置になっちゃった。すでにパッキングしてから何時間も経ってるし、24時間経った後にはさらに成田まで10時間かかる。ああ終わった、全滅だ……と思って、その夜は悪夢にうなされて何度も飛び起きました。

 結局カニは全部生きててくれて、無事に水族館に納めることができたんですけど、その後2年間は同じ悪夢を見ましたね。アカガニが全滅して、依頼元との信頼も何もかもパーだ、会社が潰れてしまう、どうしよう……って。

――想像してたよりずっと大変なお仕事ですね。

石垣:まっとうな精神力じゃ続けられないと思いますよ。でも海の生き物が好きだし、世界一のサプライヤー(生体納入業者)になるっていう目標があるので。それは売り上げがどうとかじゃなく、信頼という意味において。

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