放送開始から40年! 「武田鉄矢」が語り尽くす「3年B組金八先生」秘話

芸能週刊新潮 2019年8月29日号掲載

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 15歳で母になる衝撃、たのきんトリオへの熱狂――。学園ドラマの枠を超えて、一大ムーブメントを巻き起こしたのが「3年B組金八先生」だった。この秋で放送開始40年になるのを機に、金八役の武田鉄矢(70)が、秘話の総棚ざらえとばかりに語り尽くした。

〈金八先生すなわち区立中学校の坂本金八教諭は、演じる武田鉄矢が尊敬する坂本龍馬と、放送された金曜夜8時から命名されたものだった。

 当時のTBSにとって、視聴率が上がらない鬼門だった「金八」の時間帯を「なんとかしろ」との号令のもと、1979年10月、「3年B組金八先生」の放送は始まった。15歳の妊娠と出産や校内暴力などの時流をとらえた内容に、たのきんトリオをはじめとするアイドルの輩出が相まって、オバケ番組に成長したのはご存じの通り。第1シリーズの最終回は、39・9%もの視聴率を記録している。

 その後も2011年まで、32年にわたって八つのシリーズが放映された、この学園ドラマの代名詞。放送開始から40年を迎えるに当たり、衝撃場面の舞台裏について、武田鉄矢が微に入り細をうがち記憶をよみがえらせた。〉

 当時の自分のポジションをはっきりさせると、二流にも達しない三流のフォークグループ。それが映画「幸福の黄色いハンカチ」で山田洋次というすごい人に起用されて、注目を浴びたものだから、TBSという、テレビ局のなかでも卸問屋のような迫力がある局に呼ばれたんですよね。

 でも、裏番組がプロレスと「太陽にほえろ!」ですよ。この時間帯に中学生のドラマを作ったところでまず負ける、という明るくない状況でしたが、プロデューサーと脚本家には負け戦の覚悟がありました。全国の学校の各クラスに生徒が30人ずついるとしたら、1人か2人は観て、彼らが学校で「昨日の金八先生、観た?」と言って、それが春までにクラスで4、5人になればいい。中学生が考え込むような生々しい青春を描きましょう、とね。

 それでクラス全員に主役が回ってくるような、大きく揺れ動くドラマがいいということに。金八は、田舎から上京してきたばかりのダサい青年で、優等生が苦手で、でも、劣等生の横に座ってしみじみ話し込むと味わいがあるような青年を、ということで僕に白羽の矢が立ったんです。

 私はただ単に、8時台に主役をできる喜びだけで始めて、最初は台本も熱血先生を描いてくれていたんですが、第3回くらいから風向きが変わったので、大筋の大ネタを聞いたんですよ。そうしたら、15歳の少女が妊娠するっていう。

 僕は迂闊にも知らなかったんですけど、それは既定の路線だったんです。たしかに、演出が妙だなとは思っていました。芝居が上手な子なんてほとんどおりませんで、上手いのは杉田かおると鶴見辰吾くらいでしたが、当初から演出家が杉田を捕まえて、「メイクするな」と言っていました。杉田だけ別の顔色にするので、変だなと思っていましたが、最初から妊娠しているという演出だったんです。

 こちらはあまり深く聞かされていなかったんですが、杉田にはしきりに「顔色を悪く」とか言っていて、彼女が気持ち悪くなってしゃがみ込む場面もあって、なんでこの子にはそんなことをさせるのかな、と思っていたら、第4回「十五歳の母」で、彼女が扮する浅井雪乃が倒れました。妊娠して、学校が震え上がるっていう回だったんです。

 私自身も正直、中村雅俊の小型版にでもなればいいって感じで、シリアスなのはやりたくなかったんですけどね。第5回「十五歳の母 その2」で、赤木春恵さんが演じる校長が堕胎させようとして、「赤ん坊はお人形さんじゃないのよ。おっぱいも飲めばうんちもする」って、すごいことを言って、それに対して金八が正義感に燃えてね。そこからドラマの質がガラッと変わりましたね。

淫らな番組を作ってくれた

 結局、産む決心をする彼女を3年B組が守るという設定で、物語は進行していきました。何回目でしたか、荒川でのロケを終えてTBSに戻って宣伝部の脇を通ると、電話が全部鳴っていて殺気立っています。スタッフが「すごい反響で、自分たちも電話応対に駆り出されて」と言うので、「なんの反響?」と聞くと「“15歳の少女を妊娠させるとはなにごとか”という抗議の電話がすごいんです」と。血の気が引いたのを覚えていますね。

 私、血相を変えてプロデューサーに「評判、よくないようですね」と。ところが「こういうのはテレビでは評判がいいって言うんです」という返答でね。でも次の週にロケに行くと、ロケ隊を見る街の人たちの目つきが変わっているんですよ。淫らな番組を作ってくれた、って。それで、ロケに使わせてもらっていた学校関係の建物なんかも「ノー」が出はじめて。うちの学校と間違えられたら困る、うちの町内からそんな子を出しているという評判が立つと、PTAに不安を与える、というんです。

 いやあ参ったな、と。ところが評判とは不思議なもので、すぐにロケ先からオーケーが出はじめるんです。各方面で社会派ドラマという捉え方をしてくれたのが大きかった。それから、第6回で金八が愛についての授業をした辺りから、クラスで話し合った結果、金八はいい先生だということになった、といった反響が来るようになりました。

 浅井雪乃の兄が東大に落ちて自殺する第21回「受験戦争に消えた命」で、金八は泣きながら授業したんですが、このときの台本はめくってもめくっても金八のセリフばかり。半分、泣きそうになりましたもん。しかも、TBSのスタッフがプレッシャーをかけるんです。とにかく撮影は一発で成功させてほしいと。撮り直すと子供たちがもたないので、カット割りはせずにカメラをいっぺんに回して、セリフが詰まろうがどうしようが、終わりまでいってほしいといいます。

 演出家は私を絞れるだけ絞るんです。で、子供たちに向かっては「先生の言葉に反応しよう」「よい言葉だと思ったら真剣に聞け、つまらなかったら聞かなくていい」と。全部、私を追い込む構造になっていて、だから、セリフが真ん中まで進んでゴールが見えてくると、涙が出てくるんですよ。解放されるっていうのもあって、気持ちがそれまでの倍くらい乗るんです。そうしたら子供たちの顔もどんどん変わって、泣きだすやつもいるんです。

 あのシーンを終えたとき、クラスの30人が万歳したんですよね。大喝采と万歳三唱。みんな達成感があったんでしょうね。

 子供たちの反応を生々しく拾うために、カメラマンはカットを割らず、続けて表情を拾っていました。回が進んで受験の時期、できが悪い子が金八に報告に行こうと、うつむいて土手の上をゆっくり歩くんですね。金八は歩きながら「二つ目の受験をがんばろう」って励ますんですけど、そのとき安定しないハンディカメラを使っていたんです。でも映像を見たら、びゅーびゅーと風が吹くなか、教師とできの悪い生徒4人くらいが土手を歩いていて、本当に心寒くなるんです。そういう皮膚感覚のカットの割り方も、試されていたんじゃないかな。

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