巨人、増田大輝の活躍が今季優勝の予兆と感じる理由【柴田勲のセブンアイズ】

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 首位の巨人、早ければ22日にも優勝マジックが点灯する。2週間前の今コラムで「尻に火がついた」と記したことを思えば、それこそアッという間の上昇劇だった。今季のセ・リーグは連勝すれば連敗、またその逆だ。

 私は、前回、必ず浮上への大波がやってくる。いまが我慢の時と強調した。

 阪神を3タテして4連勝。2位・DeNAに5ゲーム差だ。原辰徳監督はやっと一息ついたのではないか。そばで見ているほど戦っている当人たちは楽なものではない。ずっと強い緊張感を強いられている。

 ましてや、今季のセ・リーグは近年考えられなかった傾向にある。実は私はまだ、一山あるかもしれない。こう踏んでいる。

 振り返ると、9日からのヤクルト3連戦を3タテして、12日からの鬼門マツダでの広島3連戦を勝ち越して弾みをつけた。それも不調だったエース菅野智之が力投しての勝ち越しだ。野球はなんと言ってもエースと4番だ。弾みがついて当然で、阪神3タテを呼び込んだ。

 菅野、これまでと違って真っすぐの割合が多かった。球速があったし、内、外角の低めによくコントロールされていた。

 不調時はどうしても変化球で交わそうとするが、変化球には力がない。甘く入ったところをガツーンがパターンだった。それが最後まで真っすぐの球威が落ちなかった。真っすぐがあってこその変化球だ。投球の原点に戻っての復活だった。

 そして4番の岡本和真だ。いいペースでホームランを打てるようになってきた。中堅から右翼方向への打球が増えてきた。これまでは左腰が上がって手が下がっていた。これでは下からしか打てない。

 いまは腰の回転が水平になっている。右中間への打球が増えている要因だ。元々、夏場が好きだと聞く。今後も期待できそうだ。岡本に丸佳浩、坂本勇人、それに思った以上にアレックス・ゲレーロの調子もいい。打線がコンスタントに4、5点以上取れるようになってきた。18日の阪神戦では増田大輝が活躍した。レギュラーではない選手が思わぬ働きをすると、監督にはありがたいし、うれしいものだ。

 優勝するチームは勝負所になると、劇的な勝利を収めるし、ニューヒーローが出現、さらに脇役が主役に踊り出ることが多い。

 V9時代、もちろん長嶋茂雄さん、王貞治さんが主役だったけど、大詰めに差し掛かると私や高田繁さん、土井正三さん、黒江透修さんらがよく主役の座を奪ったものだ。

 増田は控えだけど、ここに来ての活躍を見ると、なんか優勝への予兆のようなものを感じる。

 巨人、残り33試合。私、先ほどまだ一山と記したが、それは23日からのDeNA3連戦、1日置いて27日からの広島3連戦があるからだ。この結果次第ではどう転ぶか分からない。なんせ今季のセは連勝・連敗、また逆パターンだ。その前に20日からは中日3連戦、まずは勝ち越して欲しい。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長、14年から巨人OB会会長を務める。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年8月6日掲載

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