ダルビッシュ 6年134億円の“大型契約”も絶不調…「復活」はあるのか?

スポーツ 野球

  • ブックマーク

Advertisement

大きな推進力に

 8月16日に33歳の誕生日を迎えたが、年齢による衰えの兆候は出ていない。従来と変わらず、4シームの平均球速は90マイル台半ば。防御率5.01の前半戦も、奪三振率は10.00を超えていた。ただ、今シーズンから、ダルビッシュはメインの球種を変更した。スタットキャストによると、それまで全投球の15%未満に過ぎなかったカッターを30%以上に増やし、4シームよりも多く投げている。前半戦の不調は、産みの苦しみではないが、モデルチェンジに伴う一時的なものだった可能性がある。

 だとすれば、カブスがめざす5年連続ポストシーズン進出と3年ぶりのワールドチャンピオンに向けて、ダルビッシュは大きな推進力となり得る。

 2年前のワールドシリーズでは、2登板とも2回途中にKOされ、ドジャースが敗れる一因となった。だが、これはダルビッシュの球そのものが通用しなかったわけではなく、対戦相手のヒューストン・アストロズにいたカルロス・ベルトランに癖を見抜かれ、球種を読まれていたようだ。シリーズ直後にスラッガー誌とやりとりしたツイートのなかで、ダルビッシュは「ベルトランは癖を見る天才です」と書いている。ダルビッシュとベルトランは、元チームメイトだ。2016年の後半戦に、レンジャーズでともにプレーした。

 ベルトランは、この年のワールドシリーズ優勝を有終の美として、選手生活に別れを告げた。現在はニューヨーク・ヤンキースに在籍しているが、スペシャル・アドバイザーなので、ベンチには入らない。ダルビッシュにしても、同じ過ちを繰り返すことはないだろう。すでに癖は修正しているはずだ。

 ここからの好投で、カブスをワールドチャンピオンに導けば……。今までの評価は一転し、ダルビッシュはヒーローとして喝采を浴びる。

宇根夏樹(うね・なつき)
1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライターとして、『スラッガー』などに執筆している。著書『MLB人類学-名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年8月18日掲載

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。