「ピアノ売ってちょーだい」のCMでお馴染み、俳優「財津一郎」は今どうしているのか

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「ピアノ売ってちょーだい」「もっと、もーっとタケモット!」。ピアノ買取業者・タケモトピアノ(大阪府堺市)のCMがあらためて注目されている。同社が提供する「ポツンと一軒家」(テレビ朝日系)が20%前後の高視聴率をマークしているせいでもあるだろう。出演しているのはベテラン俳優の財津一郎(85)だが、このところタケモトピアノのCM以外で姿を見ない。どうしたのか?

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 財津一郎はどうしているのか? 

 2007年10月7日に放送された「行列のできる法律相談所スペシャル」(日本テレビ)以来、テレビ出演がない。映画への出演も2010年11月に公開された主演作「ふたたび swing me again」が最後だ。

 タケモトピアノのCMは頻繁に見かけるものの、このCMは同じものが19年使われている。アナログ時代につくられたものが地デジサイズにあらためられている。財津の活動実体は2010年11月以降ないのだ。

「お体の具合がよくないんですよ」

 そう話してくれたのは元朝日放送プロデューサーの澤田隆治氏(86)。故・藤田まことさんが主演した伝説のコメディー番組「てなもんや三度笠」(1962年)の生みの親である。

 下積み生活が長かった財津は、この番組で変な浪人・蛇口一角役を演じたことで、一躍世に出た。

 なにしろ、最高視聴率が64.8%(関西地区、ニールセン調べ)に達するお化け番組だったのである。出演陣の中でも蛇口は屈指の人気者で、決めゼリフは「ちょ〜だい!」と「きびしいー!」。タケモトピアノのCMの原型はここにある。

「『てなもんや三度笠』をCS放送の時代劇チャンネルが7月 28 日から放送することになったので、先日、その記念特別番組として、私と財津さんとやはり出演していた西川きよしさん、山本リンダさんらで番組について語り合おうということになったんです。ところが、財津さんはお体の具合がよくないということで辞退された。残念でした」(同・澤田隆治氏)

 財津は61歳だった1995年、脳内出血で倒れ、開頭手術を受けて、リハビリの後に復帰している。

 俳優仲間らは以前から「予後がよくないのかもしれない」と心配していた。現状を聞こうと所属事務所を訪れたが、日中にも関わらず人の気配がなかった。財津の事実上の活動休止と軌を一にして、所属事務所の動きも止まっているのか・・・。

 財津は2010年11月に公開された主演作「ふたたび swing me again」の公開時、映画担当記者たちに「これが最後の映画」と話していた。既に体調面での不安を感じていたのかもしれない。

 にもかかわらず出演したのは、作品と役柄に惚れ込んだために違いない。演じたトランペッターの貴島は、ハンセン病療養所から、50年ぶりに息子の家に戻る。そして孫と一緒に療養所に入る前の青春期をともにしたジャズバンド仲間を捜す旅に出る。見る側にさまざまなことを問い掛ける骨太の作品だった。

 財津さんを単なるコメディアンと誤解している人もいるが、もとは演劇青年ということもあって、シリアスな演技も得意。熊本市に生まれ、県内屈指の名門高・済々黌高校に進み、卒業後は早稲田大の演劇学科を目指した。だが、受験に失敗したため、帝国劇場ミュージカルの研究生に。榎本健一映画演劇研究所などで演技の勉強も積んでいる。

「ミュージカルの下地があるから、『ちょーだい!』というセリフもリズミカルなんですよ」(前出・澤田氏)

 財津の音楽的な才能はタケモトピアノのCMへの起用理由の一つでもある。

「ピアノを買い取らせていただく会社のCMですから、歌って踊れる人のほうがいい。また、『売ってちょうだい』というセリフも財津さんならではです」(タケモトピアノ広報担当者)

 それにしても19年とは、随分と放送期間が長いのでは・・・。

「つくり替える理由がありませんから。好評どころか、年々評価が高まっています」(同・タケモトピアノ広報担当者)

 実際、タケモトピアノのCMは評判が高いのだ。CM総合研究所調べによる「2018年度 『消費者を動かしたCM展開』全96商品」にも選ばれた。

 また、関西を中心に「赤ちゃんが泣きやむCM」と信じられている。財津らの歌声が赤ちゃんに心地よいらしい。

 ちなみに同社の認知度は抜群だが、「買ったあとのピアノはどうするのか?」という声もあるようなので説明しておくと、修繕後に海外へ輸出している。

 財津さんの話に戻る。長男(58)は日本テレビ社員だ。

「『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』などをつくった、真面目で優秀なバラエティーディレクターでした」(日本テレビスタッフ)

 出演者の父とは違い、制作者の道を選んだわけだ。

「今は海外に番組を販売する仕事をしている。いずれにせよ、財津さんにとっては自慢の息子に違いありません。時代劇チャンネルに出演辞退の連絡を入れたのも息子のようです」(同・日本テレビスタッフ)

 主演映画のタイトルではないが、ふたたび財津さんの元気な姿が見られることを祈りたい。

高堀冬彦(ライター、エディター)
1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長。2019年4月退社。独立

週刊新潮WEB取材班

2019年8月16日掲載

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