夏の甲子園で古豪復活! 広島商、高松商…伝統校が旋風を巻き起こすか?

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 8月6日に開幕する第101回全国高校野球選手権。初出場は3校というのは代表校が49校になってからは最小の数字であり、13年連続出場の聖光学院(福島)、9年連続出場の作新学院(栃木)などいわゆる常連校の出場が多い印象を受ける。

 その一方で、オールドファンには懐かしい顔ぶれも久しぶりに夏の甲子園に帰ってきた。最も代表的なのが広島商(広島・15年ぶり23回目)になるだろう。昭和最後となった1988年の第60回大会で優勝して以降は県内でもライバルである広陵、新興勢力の如水館、広島新庄などの後塵を拝することが多かった。だが、今年は春の広島県大会を制した勢いそのままに夏も見事な戦いぶりで勝ち上がってきた。

 広島商の伝統と言えば手堅い守備、そして機動力と小技を使った細かい野球である。夏の広島大会でも6試合で12盗塁、20犠打を記録し、失策はわずかに2とその伝統は受け継がれている。

 しかし、今年の広島商の特徴はそれだけではない。準決勝でライバルの広陵から13得点、決勝でも尾道を相手に10得点と打力も大きな武器となっている。攻撃のキーマンとなるのがトップバッターの天井一輝(3年)だ。俊足のリードオフマンだが、決してバッティングは小さくなく、強く振り切るスイングで広角に鋭い当たりを放つ。広島大会では打率5割をマークし、長打も5本放つなどそのバットでチームを牽引した。4番の真鍋駿(3年)、5番の花崎成海(3年)も力強い打撃を見せており、チーム本塁打は0だが決して小技だけのチームではない。タイプの異なる3人の右投手を中心とした複数の投手で繋ぐ戦い方も、以前のイメージとは異なっている。

 高松商(23年ぶり20回目)は夏こそ久しぶりの出場となるが、2016年の選抜では準優勝を果たし、今年の選抜にも出場するなど見事な戦いぶりで古豪復活を印象付けている。チームの中心となるのはエースの香川卓摩(3年)だ。165cm、62kgと小柄だが、サウスポーらしいボールの角度があり、好調時には140キロ以上のスピードもマークする。今年の選抜では、香川に頼る部分が多かったが、2番手の中塚公晴(3年)も能力は高く、夏の香川大会ではイニング数を上回る奪三振をマークしている。

 打線は選抜で準優勝した時のチームに比べると全体的に小柄な選手が多いが、下位打線からも長打が飛び出すなど攻撃力も決して低くはない。長く中学野球の指導者として結果を残してきた長尾健司監督は常に新しい手法を取り入れることでも知られており、伝統校に新しい風を吹かせている。

 高松商と同じく春夏連続出場となった米子東(28年ぶり14回目)も見事な復活を果たした。近年は県内での上位進出もままならなかったが、1981年生まれと、まだまだ若い紙本庸由監督が2013年8月から指揮を執ると、それまでの伝統にとらわれないスタイルでチームを強化。柔軟性を維持しながら体重の増加に取り組んでパワーをつけると、この夏も4試合で犠打はわずかに2、24得点と打ち勝つ野球で鳥取大会を制した。大型ショートの岡本大翔(2年)、選抜では4番を務めた福島悠高(3年)の4番、5番は全国レベルでも引けを取らない長打力があり、エースの森下祐樹(3年)の粘りのあるピッチングも光る。選抜は初戦で敗れているだけに、夏に期す思いも強いだろう。

 古豪というとどうしても野球のスタイルも古いイメージがあるが、それだけではやはり勝てない時代になっていることは確かであり、ここで取り上げた3校は新しいスタイルを取り入れながら勝ち上がってきている。昨年、12年ぶりに出場した高知商(高知)も、1回戦で山梨学院を相手に14対12、2回戦で慶応を相手に12対6で打ち勝ち、それまでのイメージを大きく変えた。

 商業高校ないし工業高校が夏の甲子園で優勝したのは23年前の78回大会の松山商(愛媛)まで遡ることとなる。ちなみにその決勝の相手は熊本工(熊本)で、「奇跡のバックホーム」を生んだ名勝負を演じた。それ以降、夏の甲子園では商業高校と工業高校は決勝戦に進出していない。令和となって最初の大会で、スタイルを変えて復活を果たした古豪が果たしてどんな戦いを見せてくれるだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2019年8月6日掲載

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